■「一部が排除される制度」

 フロイドさんの暴行死を受け、ミネソタ州のティム・ワルツ(Tim Walz)知事は、過去10年間の警察官の行動について徹底調査することを発表した。その際、「これは制度の破綻ではない。この制度は完璧に意図されたとおりに機能している。残念なことは、この制度から一部が排除されるようになっていることだ」との考えを明らかにした。

 だが人種差別的と非難されているのは、なにも警察に限ったことではない。

 20世紀初頭の法律では、市内にある特定地域の土地をアフリカ系の住民は購入できないと定められた。だが構造的人種差別の研究団体「マッピング・ジャスティス(Mapping Justice)」によると、この法律が廃止された後も、銀行と不動産業者はアフリカ系米国人に対して差別を続けたという。

 ミネアポリス市は2018年、白人が多い居住地区での不動産購入に関してアフリカ系の住民をサポートする法改正を行ったが、その実情は以前とあまり変わっていないとされる。

■「みんながお互いに助け合っている」

 米国の別の地域と同様に、アフリカ系の住民は経済的に苦しい立場に置かれている。ミネソタ保健局(Minnesota Department of Health)によると、貧困ラインを下回るアフリカ系の世帯が28%であるのに対し、白人の世帯では同7.2%にとどまっている。

 先月末、アレクサンドラ・アルタビア(Alexandra Artavia)さん(28)は、貧困家庭と零細業者をサポートするため、黒人教会に食料を寄付した。同市では貧困層の多くが、新型コロナウイルスの大流行と、暴徒化した抗議デモによる破壊行為で大打撃を受けているのだ。

 アルタビアさんだけではない。ミネアポリス市民の多くが、こうした状況を打開しようと積極的に動いている。市内の駐車場や教会の前、ショッピングモールでは、寄付を募る人々の姿が見られ、またその活動は、オンラインでも展開されている。さらに、市内の集会では、白人と黒人が一緒になってマイノリティーに対する警察の差別的な扱いと暴力行為をやめるよう求める声が上がっており、ミネアポリスが持つリベラルな評判が全て崩れ去ってしまったわけではないことも分かる。

 こうした連帯に、フロイドさんが命を落とした事件現場で1週間寝泊まりしたという黒人男性のジミー・ブランコ(Jimmy Blanco)さん(32)は、心が震えたと述べる。事件現場は現在、フロイドさんを哀悼するためのメモリアルとなっている。

 ブランコさんは、「みんながお互いに助け合っている。誰も置き去りにされていない」ことを指摘し、これまでこの国で生きてきた中で最高の気持ちを味わっているとコメントした。(c)AFP/Charlotte PLANTIVE