【6月7日 CNS】中国・重慶市(Chongqing)南岸区(Nan'an)の医療機関2か所で先日、「医療保険のスマート監視・審査システム」の試験的な運用が開始された。

 同システムは、区内の複数の医療機関でネットを通してデータを共有化し、区の医療保障局はリアルタイムで医療基金の運行状況を監視できるもの。医師はオンラインで患者の診療記録を確認でき、薬の重複処方や過大な投薬などを未然に防ぎ、医療保険詐欺の発見にも効果があるとされる。

 同システム起用の背景には、同区の病院「重慶学府医院」で発生した1000万元(約1億5000万円)をこえる医療保険詐欺事件に対する反省がある。

■一通の告発状が1000万元の医療保険詐欺事件を明るみに

 重慶市南岸区の共産党規律委員会は2018年1月、一通の告発状を受け取る。告発の内容は、社会保険局の文瑛(Wen Ying)局長が「学府医院」から賄賂をもらっており「学府医院」は医療保険の請求額を上乗せしている、というものだった。

 その少し前に、重慶市の公安機関は別件で「学府医院」の元院長、張容疑者と法定代表者の梁容疑者などを詐欺の疑いで立件し捜査中だったため、この告発状は関係者の注意を引くこととなる。基礎的な調査の結果、文局長は自身の給与はほとんど使っていないにもかかわらず、高額のぜいたく品を消費していたことが判明。18年7月、南岸区規律委員会は規定にのっとり、文局長の「留置措施(強制的拘束)」に踏み切る。

 捜査の結果、13年1月から18年7月までの間、文局長は職務権限を悪用し、「学府医院」などの医療機関4か所から現金127万9000元(約2000万円)を14回に分けて懐に入れていた。

 調査員がさらに調査を進めると、芋づる式に133人の共産党員幹部や公職者の違法行為が判明、「学府医院」の医療保険詐欺の流れが明るみに出てきた。13年から17年までの間「学府医院」は不法なやり方で患者を取り込み、虚偽の診療記録を作り、大幅にデータの書き換えをするなどで医療保険基金から1429万元(約2億1800万円)をだまし取っていた。

 この後、重慶市医療保障局と衛生健康委員会は、全市域で医療保険詐欺の摘発を進め、1520か所の医療機関を医療保険サービス停止とし、537か所を医療保険指定解除とし、407か所を行政処罰、148件の訴訟を行い、メディアを通じて典型的な犯罪手口593種を公表するなど、全市で強烈な反響を引き起こした。(c)CNS-中国紀検監察報/JCM/AFPBB News