【6月4日 AFP】米国人を驚かせ、感動させた写真がある。ここ数十年で最も広範囲に及ぶ、国を揺るがす抗議デモの参加者とともに警察官がひざまずいた場面を捉えたものだ。そうすることで、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が非難した、人種差別に対する抗議のポーズを受け入れたのだ。

 警察官が非武装の黒人男性、ジョージ・フロイド(George Floyd)さんを過剰な力の行使によって死亡させた事件をきっかけに、全米で抗議活動が激化している。トランプ氏が暴力的に発展することもあるデモの取り締まりを強化する中、ニューヨークやロサンゼルス、ヒューストン(Houston)などの警察官が、激怒するデモ参加者らに連帯を示している。

「私はヘルメットを外し、警棒を下ろした。どこまで歩こう? 一晩中歩くつもりだ」。米ミシガン州フリント(Flint)のクリス・スワンソン(Chris Swanson)保安官は5月30日、デモ隊に向かってそう呼びかけた。

 スワンソン氏はデモ隊と歩き始めた。デモに参加していた人たちを励まし、若い黒人男性とセルフィー(自撮り写真)を撮り、親指を立てるポーズすらした。

 アイオワ州デモイン(Des Moines)では、ダナ・ウィンガート(Dana Wingert)警察署長がデモ隊の前で他の警察官らとともに膝をつき、このように説明した。「象徴的な方法でデモに参加する、せめてそれくらいはさせてほしい」

■アメフト選手の膝つき抗議

 人種差別に抗議する全国のデモ参加者は、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)、サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)の元選手、コリン・キャパニック(Colin Kaepernick)氏が取ったことで有名になった抗議のポーズを取り入れた。キャパニック氏は2016年、黒人や他のマイノリティー(少数派)に対する警察の残忍な行為について、試合前の国歌演奏時に膝をつくことで抗議の姿勢を示した。

 キャパニック氏は膝つき抗議によってNFLから追放された。膝つき抗議はキャパニック氏の他、意思を同じくする選手に対して、トランプ氏を含む保守派からの非難と侮辱を招いた。

 ニューヨークでは1日、白人のテレンス・モナハン(Terence Monahan)警察署長がデモ参加者らと握り合った手を上に掲げてひざまずく、印象的な場面が撮影された。フロイドさんの死に対する激しい怒りを共有するとともに、支援を表明したのだ。同様の場面はフロリダ、イリノイ、ミズーリ、ジョージアの各州と、首都ワシントンでも見られた。