■性急な「裁き」もたらす危険性も

 2014年にニューヨークの警察官により窒息させられたエリック・ガーナー(Eric Garner)さんの死は、全米で「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動に火を付けた。このときの様子を撮影したのはフロイドさんのときと同様、警察ではなく目撃者だった。

 フロリダ大学(University of Florida)の人種・人種間関係研究センターのキャサリン・ラッセルブラウン(Katheryn Russell-Brown)センター長は、「一般に公開されたこれらの動画は、われわれの刑事司法制度が一種の機能不全となっていることを実際に指し示している」と指摘する。

「それは、一般市民が公務員や公共の場にいる人々を監視して、正義を実現させる、または少なくとも正義について警鐘を鳴らすようにさせることが必要であることを示している」

 撮影は大きな影響を及ぼす場合があり、専門家らはソーシャルネットワーク上で、性急な「裁き」がなされる危険性について警告している。

 セントラルパークの出来事はメディア上で大きな反響を呼び、緊急通報番号911に電話する様子を撮影されたエイミー・クーパー(Amy Cooper)さんは、一日のうちに資産運用会社の副社長の職と自身の匿名性を失い、犬を手放した。

 エイミーさんと名字は同じだが他人であるクリスチャン・クーパーさんは、「私は人種差別は許さない。だが彼女の人生が引き裂かれる必要があったのか、私には分からない」と語った。(c)AFP/Thomas URBAIN