【6月3日 AFP】3つの大陸に存在していた広大な原生熱帯雨林が2019年に大きく消失したとの調査結果が2日、発表された。牛の飼育や商品作物を栽培するための土地確保を目的に、伐採されたり燃やされたりした原生熱帯雨林の面積は、スイスの国土にほぼ匹敵するという。

 米メリーランド大学(University of Maryland)の研究施設グローバル・フォレスト・ウオッチ(Global Forest Watch)が発表した衛星データに基づく年次報告書によると、この消失面積の3分の1以上を占めたのがブラジルで、次いでコンゴ、インドネシアの順となった。しかし、ブラジルでの焼失が突出していた。

 2019年に破壊された原生林の面積は3万8000平方キロに及び、20年前に科学者らが原生林減少の追跡調査を始めてから3番目に広い面積となった。これはサッカー場ほどの広さの原生樹林が6秒ごとに破壊されるペースに相当する。しかし、森林伐採後に再生した二次林や植林地を対象に含めると、世界中で実際に焼失および破壊された熱帯雨林の総面積はその3倍に達するという。

 2019年、世界では気候危機に対する注目が高まり、その流れの中でブラジルを襲った森林火災がトップニュースとして報じられた。しかし、今回のデータによって、火災がブラジルの原生林消失の主要因ではなかったことが明らかになった。

 衛星画像で分かったのは、森林破壊の新たな「ホットスポット(多発地域)」が多数存在していることで、その一つが、ブラジル北部パラ(Para)州での森林消失区域だった。ここでの消失については、州内の先住民保護区内で報告された違法な土地収奪との合致を示していたのだ。

 その後、ブラジルではさらに、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領政権が、先住民保護区内での商業的採鉱、石油や天然ガスの採掘、大規模農業などに対する規制の緩和につながり得る法案を提出している。これらの経済活動はすべて、既に名ばかりとなってしまっている保護区への侵入をさらに多発させる恐れがある。

 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が事態をさらに悪化させることも考えられる。これは、COVID-19で特に大きな打撃を受けているブラジルに限ったことではない。ただでさえ脆弱(ぜいじゃく)な法執行能力がパンデミックによってさらに弱体化している熱帯雨林諸国ではどこでも、状況がさらに悪化する恐れがあるのだ。(c)AFP/Marlowe HOOD