■自国の汚点から注意そらすことが狙い?

 専門家らは、中国とイランは人権に関して立派な見本と言えるべき国ではないと指摘する。

 人権活動家らによれば、中国は大規模な「洗脳キャンプ」に少なくとも100万人のウイグル人とチュルク諸語を話すその他のイスラム教徒を収容している。イランでは先日、議員の一人が、燃料価格の値上げに端を発して11月に同国で相次いだ抗議デモの死者数は最大230人に上ると示唆したが、他国の人権団体は、実際の数はそれよりはるかに多いと指摘している。

 米国の人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ファースト(Human Rights First)」のロブ・バーシンスキー(Rob Berschinski)副理事長(政策問題担当)は、「すべての国と同じく、米国は人権に関して完璧というわけではない。むしろ程遠い」と述べた上で、「しかし、私のような人権活動家がこんなことを公然と言えるという事実によって、米国をはじめとする自由主義の国は、中国やイランといった国々とは一線を画している」と続けた。

「中国・イラン両政府が米国のデモを批判するのは、人種差別を懸念しているからではなく、自分たちの汚点から注意をそらすためだ」

 バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領時代に国務省で働いていたバーシンスキー氏は一方で、トランプ氏は略奪している暴徒への発砲を求めるような内容をツイッター(Twitter)で示唆するなど、自由主義を損ねていると主張。

「米国市民が同じ国の警察に非人間的な扱いを受け、トランプ大統領のような国家の指導者が暴力を助長すれば、当然ながら、米国が他国の人権問題について何を語ろうが、信頼されなくなる」と述べた。

■同盟国の政府はトランプ氏を批判せず

 一方、英国、アイルランド、ニュージーランドなどの米国の同盟国では、連帯を示す抗議デモが起きているが、こうした国々の政府は、米国の警察による残忍な行為については一般論として言及するにとどめ、トランプ氏を批判することはしていない。

 ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相の報道官は、今回の暴力は「非常に憂慮すべき」だと述べ、少なくとも英国人1人を含むジャーナリストらが逮捕されたことに懸念を表明。国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長の報道官は、米国の警察は「どの国でもそうであるように」節度を持って行動するべきであり、世界中の警察は人権問題について研修を受ける必要があると述べた。(c)AFP/Shaun TANDON