【6月2日 AFP】米ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で警察官が非武装の黒人男性を過剰な力の行使によって死亡させた問題をきっかけに全米で抗議活動が激化する中、これまで人権問題に関して米政府から批判を受ける側にいた国々が形勢を逆転し、喜々として米国に矛先を向けている。

 米国の人種差別の事例を非難したのは中国だ。米国はこの数日前、香港への「国家安全法」を導入する方針を決定した中国に対して対抗措置を講じる構えを見せたばかりだった。イランも非難の輪に加わった。イラン当局は、昨年11月に反政府デモを鎮圧したことを理由に米国から制裁措置を受けていた。

 ミネアポリスでジョージ・フロイド(George Floyd)さんは、白人警官に首を膝で9分近く押さえ付けられ、「息ができない」と訴えた後に亡くなった。この死を受け、全米各地で過去50年で最悪レベルの暴動が発生し、複数の都市に夜間外出禁止令が出されている。

「米国の人種的なマイノリティー(少数派)に対する人種差別は、同国の社会の慢性病だ」と、中国外務省の趙立堅(Zhao Lijian)報道官は主張。「現在の状況は、同国における人種差別と警察による暴力という問題の深刻さを改めて浮き彫りにしている」と北京で記者団に語った。

 さらに、イランのアッバス・ムサビ(Abbas Mousavi)外務省報道官はテヘランで、ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権がイランの反体制派への支持を表明して繰り返し呼び掛けたメッセージをまね、英語で次のように述べた。

「米国民に告ぐ。抑圧された状況に対するあなた方の怒りの声を世界が聞いている。世界はあなた方と共にある」「米当局と警察に告ぐ。国民に対する暴力をやめ、国民が息ができるようにせよ」

 トランプ氏の国家安全保障顧問であるロバート・オブライエン(Robert O'Brien)氏は米ABCニュース(ABC News)で中国当局に対し、「わが国で目にしていることに喜びと慰めを見いだしている」と非難。是正を求めている米国人は「平和的な抗議をしたことを理由に投獄されることはない。私たちとあなた方の国とでは違う」と述べた。