【6月2日 AFP】世界保健機関(WHO)は1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)の中で増えている抗生物質の使用が、細菌の耐性を強化し、コロナ危機の間やそれ以降の死者の増加につながる可能性があると警告した。

 WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は、従来の治療で使用されてきた薬に対する耐性を強めている細菌感染症の病原体が「憂慮すべき数」に上っていると述べた。

 WHOは以前から、新型ウイルス危機の間の抗生物質の不適切な使用によって、この傾向に拍車がかかることに懸念を表明していた。

 スイス・ジュネーブのWHO本部からオンライン会見を行ったテドロス事務局長は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって抗生物質の使用が増加しているが、これはやがて細菌の耐性率の上昇を招き、パンデミックの間やそれ以降の病気や死者の数に影響を及ぼすだろう」と語った。

 WHOによると新型コロナウイルス感染症患者のうち、二次感染(細菌感染)の治療に抗生物質を必要とする患者はごく一部にすぎないという。

 WHOでは医療従事者に対し、新型コロナウイルス感染症の軽症患者、または細菌感染が疑われない中等度の疾患の患者に対して抗生物質による治療や予防を行わないよう指導するガイドラインを示している。

 テドロス氏はこのガイドラインについて、命を救いつつ抗菌薬耐性に取り組む一助とすべきだとし、抗菌薬耐性の脅威は「われわれの時代の最も緊急な課題の一つ」であり、「決定的に重要な抗菌薬の使用能力を世界が失いつつあることは明らか」だと述べた。

 さらに抗生物質の不適切な使用法がみられると強調し、一部の国で抗生物質が「過剰に使用されている」一方で、低所得国では救命に必要な薬剤を入手できず、「いわれのない苦痛や死を招いている」と述べた。(c)AFP/Robin MILLARD