【6月2日 AFP】スペイン・バルセロナ(Barcelona)のグエル(Guell)公園を歩く親子、クロアチア・ドブロブニク(Dubrovnik)の大理石の通りで静寂を味わう男性、ポルトガルの首都リスボン旧市街の静けさを満喫する女性。普段は観光客の喧騒(けんそう)で知られる三つの都市は今、異常なほど静かだ。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受けて実施されたロックダウン(都市封鎖)は、誰にでも歓迎されたわけではないかもしれない。だが少なくとも一時的には、観光に起因する問題、特に都市中心部の過密状態や、物価や家賃の急騰を緩和する効果があった。

 近代建築家アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の偉大な遺産の一つで、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)であるバルセロナのグエル公園は今、地元住民が独占している。

 友人と一緒に子どもたちを連れて来ていた体育教師のライア・トラ(Laia Torra)さん(39)は、「子どもの頃はずっとこの公園で遊んでいたのに、娘とは全く来たことがなかった。いつもは人が多過ぎて何もできないから」と語った。グエル公園はバルセロナに来たら外せない自撮りスポットらしく、普段はベストアングルを探す観光客で混み合っている。

 住民の人口は4万2000人のクロアチアのドブロブニクは「アドリア海(Adriatic)の真珠」と呼ばれ、米テレビドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」のロケ地ともなり、ビーチはいつも観光客であふれ返っていた。

 数千人を運んでいた巨大なクルーズ船は、この小さな港にはもはや停泊していない。平穏な時間の訪れは、景気の先行きを考えれば、もろ刃の剣でもある。

 通信会社で技術者として働くムラデン・クリツ(Mladen Kriz)さん(43)は、観光ガイドの妻と2人の子どもとこの街に住む。クリツさんは「私たちはこの2、3か月、いくらかリラックスできた」が、「同時に観光客がいないと、がらんとし過ぎている気もする」「多くの人が観光業で食べている。観光客がいない状態で、私たちはこれからどうやって生きていくんだろう?」と話した。