【6月1日 AFP】ドイツの国会議事堂などの歴史的建造物を布で包む大規模アートで知られるクリスト(Christo)氏が、5月31日死去した。84歳だった。同氏の公式フェイスブック(Facebook)ページで明らかにされた。

 発表によると、クリスト・ヴラディミロフ・ヤバシェフ(Christo Vladimirov Javacheff)氏は、米ニューヨーク市内の自宅で老衰のため死去したという。

 クリスト氏はブルガリア出身のアーティストで、51年間寄り添った妻のジャンヌ・クロード(Jeanne-Claude)氏と共に創作活動を続けた。ジャンヌ・クロード氏は2009年に他界した。

 2人の大規模作品は準備に数年を要し、設置には高額な費用がかかったが、その作品はほとんどの場合、わずか数週から数か月で撤去された。

 フランス首都パリで進行中だった凱旋(がいせん)門(Arc de Triomphe)を包むプロジェクト「l'Arc de Triomphe, Wrapped」については、クリスト氏の事務所は本人の希望通り完成させると発表している。プロジェクトは予定通りに進行しており、来年9月18日に公開予定だという。

■包むというアート

 初めて公共の場に登場した2人の大規模インスタレーションは、1968年にスイスの首都ベルンにある美術館を2430平方メートルの布で包んだものだった。

 2人が世界各地で制作した作品の中でも特に有名なものには、1985年にパリ最古の橋ポンヌフ(Pont Neuf)を包んだ作品や、1995年にドイツ首都ベルリンの旧ドイツ帝国議会議事堂を包んだ作品などがある。

 このほかにも、島々を水面に浮かぶピンク色の素材で囲んだり、オーストラリアの海岸を一面の白で覆ったり、米カリフォルニア州の丘に39キロに及ぶ布のフェンスを設置したりするなどのインスタレーションを制作した。

 こうした一時的なインスタレーション作品にかかる費用は莫大(ばくだい)で、2人のウェブサイトによると、1991年の作品「アンブレラ(The Umbrellas)」には2600万ドル(約28億円)かかったが全額自費で賄ったという。この作品はカリフォルニア州と日本で同時に巨大な青と黄色の傘を設置するというもので、わずか18日後に撤去された。(c)AFP