■コロナ危機、論文発表作業に負荷

 主な懸念事項の一つは、データを提供した国と病院に関する情報がないことだ。データは、米イリノイ州シカゴに拠点を置く医療データ分析会社サージスフィア(Surgisphere)が提供している。

 オーストラリアのデータが実際と違うことも問題視された。論文で調査対象とされた病院の死者数の合計は、実際に公表されているオーストラリア全体の死者数より多かったという。

 ランセットは29日、データの不一致を修正した改訂版を発表する準備を進めていると明らかにするとともに、この不一致は、オーストラレーシア(Australasia  オーストラリア、ニュージーランド、およびその付近の島々の総称)にあるとしていた病院が実はアジアにあったために発生したもので、論文の結論自体に変更はないと述べた。

 メフラ氏も、論文の執筆者らが論文の学術的な再調査を開始したとする声明を発表。調査は「ヒドロキシクロロキンやクロロキンに関する大規模で確実な、公に利用できるデータがない状態」で行ったと指摘した。

 同氏は、「論文の中で明確に述べている通り、著者らは無作為化臨床試験の重要性とその価値を強調し、何らかの結論を出すにはこうした臨床試験が必要だと明確に述べている」 「しかしながら、そうした臨床試験の結果は夏まで見込めない上、状況が切迫していることから、暫定的なステップとして利用可能なデータを活用した」と主張している。

 WHOの広報担当者は、ヒドロキシクロロキンとクロロキンの包括的な見直しは6月中旬に結論が出るとの見通しを示した。

 新型コロナウイルス危機により、研究および論文の査読のプロセスが大幅に加速しており、通常はゆっくりしたペースで進められる科学論文を発表する作業に大きな負荷がかかっている。(c)AFP/Kelly MACNAMARA