【5月30日 AFP】人気リアリティー番組「テラスハウス(Terrace House)」に出演中だった女子プロレスラーの木村花(Hana Kimura)さん(22)が、インターネット上で誹謗(ひぼう)中傷を受けた後に亡くなったことを受けて、国内では悲しみの声と共に、ネット中傷に対する対策の強化を求める声が上がっている。

 木村さんは自殺とみられており、国内外に衝撃が走った。怒ったファンらがソーシャルメディア上で「#言葉のナイフ」や「#誹謗中傷」などのハッシュタグを用いて改革を求め、議員らは対応に乗り出す姿勢を示している。

 韓国でも昨年、Kポップの人気女性アイドル2人が死去したことを受けて、ネット上での言葉の暴力に対しより強力な罰則を求める声が広がった。

 また今年2月、英リアリティー番組「ラブ・アイランド(Love Island)」で司会を務めていたキャロライン・フラック(Caroline Flack)さんが自殺した後は、ハッシュタグ「#BeKind(優しくなろう)」を用いた大規模なネットいじめ撲滅キャンペーンが展開された。

  男女6人が共同生活を送る恋愛リアリティー番組「テラスハウス」で、髪をピンクに染め、自信に満ちあふれた女子プロレスラーの木村さんは人気を集めていた。

 その一方で、ネット上ではさまざまな中傷の標的にされ、中には「おまえが早くいなくなれば皆幸せなのに」といったコメントもあったと報じられている。

■「許し難い」

 木村さんの死を受けて、番組は打ち切りとなった。

 高市早苗(Sanae Takaichi)総務相はネットいじめについて「許し難い」と非難。中傷コメントの発信者を特定するため、専門家らが現在制度の見直しを行っており、手続きの簡略化を進める議論を行っていくと述べた。

 この問題には、著名人らも大きな関心を示している。五輪出場経験のある元陸上選手の為末大(Dai Tamesue)氏は、ソーシャルメディアプラットフォームやインターネットプロバイダーが、誹謗中傷の発信者の追跡に協力しない場合、処罰を求めていくオンライン署名への協力を呼び掛けたところ、大勢の支持が集まった。

 為末氏はテレビ番組に出演した際、「弱い人というよりは優しい人がSNSでやっていくのはすごく難しい状況になっている」と話した。

 木村さんが所属していたプロレス団体は、ネットいじめの加害者らに対する法的措置を視野に入れているとされているが、被害者らにとってハードルは高いと専門家らは指摘している。

 寄せられたコメントが中傷またはプライバシー侵害に当たることを証明する必要があり、さらに加害者のIPアドレスや身元に関する情報を入手するため、2段階の法的手続きを踏まなければならない。

 過去に類似案件を担当している清水陽平(Yohei Shimizu)弁護士によると、手続きに約10か月を要する上、コメントが中傷またはプライバシー侵害だと証明することの難しさから、多くが泣き寝入りしているという。

「例えば死ね、とか番組に出るな、とか、言われた方は傷つくかもしれないが、一つの感想にすぎないという…あなたのことが不快である、というのを表現しただけだと。どこまで認められるのか難しい」と清水氏。

「死ねとか、権利の侵害が明らかかどうかが争われる」「言われた側が傷つくのは間違いないのに、損害が明らかかどうかを争うのは不毛な感じがする」と話している。

■「自分の家に誰かが突然来て、言われている感じ」

 また中澤佑一(Yuichi Nakazawa)弁護士は、ソーシャルメディアの性質上、嫌がらせから「逃れるのはより難しい」と指摘。

「見なければいいけど、公式アカウントを見ないというわけにはいかない」「自分の家に誰かが突然来て、言われている感じ」「SNSの匿名の悪口に対して、相談する人は他の案件に比べてかなり精神的なダメージを受けている」と、懸念を示している。

 フランスでは今月議会で、ソーシャルメディア上のヘイトスピーチを禁じる法案が可決された。この法案に対しては、検閲に当たるとの批判もある。

 日本では、法改正にはより多くの時間がかかるとみられている。議員らは、ネット上の誹謗中傷を防止するための新規制の「方向性の合意」形成を、秋までに目指すとしている。(c)AFP/Natsuko FUKUE