【5月29日 AFP】重度の肺感染症から回復した患者では、体の免疫反応を阻害する「免疫の傷跡」が形成され、これが原因で肺炎の発症リスクが増大するとの研究結果がこのほど、発表された。肺炎は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の主な死因だ。

 研究では、一部の重度感染症に罹患(りかん)した後、体の免疫反応が一時的に「スイッチが切られた」状態となり、患者が新たな細菌性疾患やウイルス性疾患にかかりやすくなることが分かったという。

 研究を行ったのは、豪メルボルン大学(University of Melbourne)ピーター・ドハーティ感染免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity)と仏ナント大学病院(University Hospital of Nantes)の専門家チーム。人間とマウスを対象に調べ、免疫系の防御の第一線を形成する細胞「マクロファージ」が、重度の感染症に罹患した後に「まひ状態」になることを明らかにした。

 マクロファージは細菌を貪食(どんしょく)して殺菌するとともに、体内で「警報」を発して免疫細胞を感染部位に急行させる。脅威が処理された時点でマクロファージは活動をやめ、体は平常の状態に戻る。

 しかし研究チームは今回、重度の感染症に罹患した患者の血液サンプルを分析した結果、患者のマクロファージが不活性化されていることを発見した。これにより、入院中の患者は、肺炎など命にかかわる恐れがある二次感染リスクの高い状態に陥ってしまう。

 欧州では年間約50万人の入院患者が肺炎に感染しており、そのうち約10%が命を落としている。

 研究チームはまた、受容体「SIRP-アルファ」が、マクロファージの再活性化を誘発するための「スイッチ」となることも発見している。このスイッチにより、マクロファージを「フル稼働」させることが可能だという。

 今回の研究は、COVID-19の治療法を考える上で今後、重要な影響を与える可能性がある。

 COVID-19による死亡の大半は、体の免疫反応が暴走するサイトカインストームが原因で起きている。サイトカインストームは、致命的となるケースが多い急性炎症が引き起こす。

 ナント大学病院のアントワーヌ・ロキリー(Antoine Roquilly)氏は、SIRP-アルファや体の免疫反応を一時的に停止させるその他の免疫スイッチに関する理解の向上が「サイトカインストームの発生を防ぎ、患者の生存率を改善する可能性がある」と指摘している。(c)AFP/Patrick GALEY