【6月4日 東方新報】中国・江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)の陽澄湖(Yangcheng Lake)産の上海ガニが先日、中国農業農村部の「農産品地理標志登記証書(中国版GI保護制度)」を与えられることになった。いわゆる国家お墨付きの「国字号ブランド」となった。

 上海ガニは、モクズガニの一種で重陽の節句の前後が食べごろとされる秋の味覚。いまや各地で養殖されているが、温暖な気候と豊富なミネラル栄養素、弱アルカリ性の水質に恵まれた陽澄湖産のものが最もおいしいく産地としての歴史もあり、古来「陽澄湖にカニがないなら、なぜ蘇州に住む必要があろうか」とまで詩にうたわれていた。その美味は海外にも聞こえていて、蘇州市は1960年代から、陽澄湖産の上海ガニを蘇州の主要対外輸出農産品として海外にも売り出している。ただ、陽澄湖産のものがあまりに有名でしかも生産量は年間2000トン前後で、中国全国で消費される上海ガニの0.3%ほどと少ない。そのため市場には陽澄湖産をかたった偽物も多い。陽澄湖とそうでないものは、末端価格でおよそ3~5倍の格差があるからだ。地元は、陽澄湖産の上海ガニは一つひとつ登録番号のタグをつけ出荷するのだが、その登録番号を付けた偽物も出回っていた。

 今回の保護制度によって、陽澄湖とその周辺で養殖された上海ガニは、相応の品質と安全生産技術モデルが制定され、地元の検査機関によって品質が鑑定され保障され、商標権や知財権保護と同じ原理でより厳しく保護されることになった。

 一方、指定地域は、陽澄湖およびその周辺516.04平方キロと広大な範囲にわたり、陽澄湖沿岸の太平街道、陽澄湖鎮、陽澄湖生態レジャーリゾート区、常塾市(Changshu)の沙家浜鎮(Shajiabangzhen)、昆山市(Kunshan)の巴城鎮(Bachengzhen)、蘇州工業園の唯亭街道にある4市区の6町村が含まれる。生産面積は1万8408ヘクタールで、年生産量は推計1万5500トンとされる。実は陽澄湖の中での養殖は湖の水質保護のために年々減らされ、ほとんどが周辺につくられた人工池での養殖池に切り替わっているのだが、これを「陽澄湖産」として市場に出してよいかどうかは、生産者、消費者の間でも意見の分かれるところであった。今回、地理標志登記によって、周辺養殖池産の上海ガニも、正式に陽澄湖産を名乗ることができる。

 今年初めには新型コロナウイルス感染症がまん延したが、幸いなことに上海ガニの養殖にはさほど影響を与えておらず、むしろ気温の上昇が例年より早かったため、カニの脱皮が早く生産量も増加すると期待されている。今秋は、より手ごろな値段でたくさんの上海ガニを堪能できそうだ。(c)東方新報/AFPBB News