【5月30日 CNS】「社会生活百科全書」とも称される「中華人民共和国民法典」の草案の人格権の中に「プライバシー権」が書き加えられ、その定義が明確になった。世論は「これで公民個人の権利がさらに十分保護尊重される」と評価している。

■夫婦の給与明細はプライバシーか?ネットでホットな話題に

 夫婦の間でもプライバシー権は存在するのか? 民法典草案では、プライバシーを「自然人として私人の生活の安心感および他人に知られたくない私的な空間、私的な活動、私的な情報」と定義している。

 もし夫婦の間にプライバシー権があるとすれば、その境界はどこだろう。「給与明細は夫婦間でもプライバシーか」という話題が、最近論争を巻き起こし、ネットユーザーの間でも加熱したやりとりが交わされている。

■債務は共同なのに、なぜ給与明細の方はプライバシー?

 あるネットユーザーは「結婚したら夫婦は一体となり、給与明細のプライバシーなんか問題じゃない」と考えている。また別のユーザーからは「結婚はしていても、個人の独立性は一定程度維持されるべき」という意見も出た。「あくまで夫婦間の問題で、2人で話し合って納得していればいい」という意見もある。

 その他、「給与明細を見せようが見せまいが、誰が金銭支配権を持つかが最も重要。その上、もっと別の要素も考慮する必要があり、一概には言えない」という人もいる。

「給与は夫婦の共同財産か?」「夫婦が共同で債務を負うとして、もし相手に隠し事があって、プライバシーを盾にそれを自分に教えてくれないとしたら、借金返済の時どうすれば公平か?」、多くの疑問や考え方が次々に湧き出てくる。

■弁護士は「状況次第で」と言う

 広東の家事案件専門の鮮雨佳(Xian Yujia)弁護士は、「給与明細を見せることは、夫婦以外の他人には拒絶できるが、夫婦の場合はプライバシー権が絶対的に通用するとはいえない」とし、「現行の婚姻法では、結婚期間中に得た財産や婚前の個人財産につき、個人にすべて帰属するか、共同財産か、あるいは一部共同化など、夫婦間で取り決めることができる」と説明する。

 もし夫婦間で具体的な取り決めが無い場合は、「婚姻法」第17条の「給与は夫婦の共同財産であり、共同財産の一部として配偶者に開示すべし」という規定に従わなければならない。婚姻法では、夫婦間で給与明細にプライバシー権はないのだ。

 鮮弁護士は「離婚訴訟で相手の給与収入の分与請求をする場合、銀行入金記録、給与明細、労働契約などで収入の証拠を提示する必要あり。もし給与明細をプライバシーの対象とすれば、訴訟の難度が増す」と指摘する。

■プライバシーの限界線は?

 清華大学(Tsinghua University)法学院の申衛星(Shen Weixing)院長は「民法典草案の大きな変化は、平穏な生活と私的な空間、活動、情報という『1+3』のプライバシー権を明確に規定したことだ。『他人に知られたくない』という限定詞がキーワードで、例えば年齢は、西洋でも中国でも『知られたくないプライバシー情報』となる」と述べた。

「今はまだ定義が不明確な部分が有るが、法律が個人のプライバシー情報をできる限り尊重するという姿勢が示された」 (c)CNS/JCM/AFPBB News