【5月29日 AFP】オーストラリア西部のピルバラ(Pilbara)地域にある4万6000年前の先住民アボリジニの洞窟遺跡を、英豪系資源大手リオ・ティント(Rio Tinto)が鉄鉱石採掘の際に破壊していたことが分かった。同社が発破で損傷を与えたと認めた。

 ウエスタンオーストラリア(Western Australia)州のジューカン渓谷(Juukan Gorge)にあるこの洞窟遺跡について、伝統的な所有者であるアボリジニの共同体は、かつてアボリジニが暮らしていた岩屋群だと確認された中では最古級で、文化的に重要な場所だと指摘。破壊されたことはアボリジニの人々にとって「壊滅的な打撃」だと訴えている。

 リオ・ティントの説明によれば、遺跡の近くで24日、鉄鉱石の採掘場を拡張するため発破を行った。この場所での発破を用いた採掘については、2013年にウエスタンオーストラリア州政府から認可を得ており、アボリジニ側とも連携して作業を進めていたとしている。

 この洞窟遺跡では2014年に発掘調査が行われ、岩屋の一つから2万8000年前のカンガルーの骨で作られた骨角器や、髪の毛を編んで作られた4000年前のベルト、国内最古級の磨石などが見つかった。髪の毛のDNA検査では、この地域に現在も暮らすアボリジニの人々との遺伝的なつながりが判明している。

 プートゥ・クンティ・クラマ土地委員会(Puutu Kunti Kurrama Land Committee)のジョン・アシュバートン(John Ashburton)委員長は、「これほど古いアボリジニの遺跡は、オーストラリアでも片手で数えられるほどしか見つかっていない」と指摘。「岩屋が破壊されたことにわれわれアボリジニは深く心を痛め、悲しんでいる。祖先や伝来の土地との結びつきが失われたことを嘆いている」と述べた。

 地元のアボリジニ団体によると、遺跡近くの渓谷で発破を行う計画は、今月15日になって初めて知った。アボリジニの人々が遺跡への立ち入りを求めた際に分かったという。計画の中止を求めてリオ・ティントと協議したが、失敗に終わったとしている。

 アシュバートン氏は、「リオ・ティントが法的義務を順守していることは認識しているが、規制制度が柔軟性を欠いている点にわれわれは深刻な懸念を抱いている」と語った。現在、リオ・ティント側と残った岩屋の保全について協議しているという。

 現地での発破による採掘を認可した法規制については、州政府が2018年から見直しを行っているところだった。(c)AFP