【5月28日 AFP】米下院で27日、200年以上の米議会史上初となる代理投票が行われ、約70人の民主党下院議員がウイグル人権法案の採決で遠隔地から投票に参加した。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため導入された措置だが、共和党は強く反対しており、法的措置にも踏み切っている。

 代理人を通じた遠隔投票を認める規定変更は今月、民主党議員の賛成多数で承認された。下院議員1人に対し、最大10人の議員を代理して投票する権利が与えられている。議員らがウイルスの拡散防止に協力しつつ職務を継続できる環境をつくるのが目的で、新型コロナ危機の間にのみ適用される。

 上院では規定変更はなく、代理投票は認められていない。

 米国では27日、新型コロナによる死者が10万人を超えた。民主党は、ウイルスの流行が続く中で議員らが首都ワシントンと地元州とを何度も行き来すれば、同僚議員や議会・党の職員、一般市民の命を危険にさらすと主張している。

 一方の共和党は、規定変更によって少数の議員が議会採決の行方を左右できるようになるのは権力の集中に当たり、憲法違反だとの見方を示している。

 435議席の下院で過半数を得るには218票が必要だが、共和党のケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)下院院内総務は、「たった20人の代理議員が220票を動かすことができてしまう」「これは、米国の始祖が想定した議会制民主主義でもなければ、合衆国憲法で認められた議会制民主主義でもない」と新規定を批判した。

 共和党は26日、代理投票の中止を求めて提訴した。民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は、この動きについて「人目を引くための嘆かわしい行為」だと評した。(c)AFP