【5月27日 東方新報】今年の中国・全国人民代表大会の「政府活動報告」は往年の慣例に反して、今年の中国経済の成長速度に関する具体的な目標を示さず、代わりに、就業と民衆の生活水準を優先するとしている。新型コロナ感染症に直面した中国経済が巨大な圧力を受けていることは明らかであり、中国経済に問題は無いか、多国籍企業にどんな影響を与えるのか、について分析した。

 中国はなぜ、今年経済成長速度の具体的目標を示さなかったのか?中国政府の説明は、目下の世界の新型コロナ感染症と経済・貿易情勢の不確実性により、中国の発展も予想しがたいリスクに直面しており、具体的な経済成長目標を設定しないことは、経済法則への尊重である、というものだった。

 中国経済には、経済成長速度の目標のほか、一体となった目標体系があり、今年の経済成長目標の中身は、すでにその他関連指標に織り込み済みと言える。例えば、今年の政府活動報告は、雇用の安定、民生の保持、貧困からの脱却などを最も突出した位置に置き、都市部で就業の機会増加900万人以上、住民消費価格の上昇幅約3.5%、現行基準の下で農村の貧困人口全てをゼロとすることなどがうたわれている。

 全体的に見ると、活動報告には、今年の財政赤字率を3.6%以上で計算し、財政赤字の規模は前年度比1兆元(約15兆円)増加すると共に、1兆元の感染症対策特别国債を発行するとしている。一連の租税公課、賃貸料、貸付金利の低減や消費と投資の拡大などの政策によって、住民の就業や基本的民生の保持、市場主体の確保などの一助となることが想定可能だ。これはまた、中国経済の「6つの保持」の仕事の中で最も重要な内容でもある。感染症の影響により、中国経済の成長は一時減速したものの、中国の独特な政治制度と分厚い経済基礎と巨大な市場により中国経済の長期的発展の良好なすう勢は変わらないだろう。

 活動報告には「外部環境の変化に対し、対外開放の拡大を堅持し、産業チェーンとサプライチェーンを安定させ、開放により改革と発展を促進する」とあるが、その趣旨は、外国投資者の中国経済に対する信用を後押しし、国際的な「中国離れ」の論調に対応することを指している。

 この他、活動報告には、対外貿易の基本的安定促進、積極的な外資利用、「一帯一路(Belt and Road)」建設、貿易と投資の自由化など4大領域の具体的な課題が示された。例えば、対外貿易と外資の安定化、新サービス貿易の革新的発展、第3回輸入博の実施、外資に対する市場参入ネガティブリストの大幅削減などだ。

 保護主義が台頭する中で、多国間貿易体制の堅持を強調し、地域的経済パートナーシップ協定の調印や中日韓の自由貿易交渉を進め、中米間の第1段階の経済貿易協定の共同実行などを進めるとしている。(c)東方新報/AFPBB News