【5月27日 AFP】当初は誰もが、絶対無理に決まっていると思っていた──。だが、イーロン・マスク(Elon Musk)氏の宇宙開発企業スペースX(SpaceX)は逆風をはねのけ、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士2人を乗せて宇宙に飛び立つ。成功すれば、米国土からの9年ぶりの有人宇宙飛行になる。

 NASAは、30年にわたる輝かしいスペースシャトル計画で、数十人の飛行士を宇宙に送り込んだ。しかし、巨大で非常に複雑な有翼型宇宙船ミッションにかかった費用は、計135回の打ち上げで約2000億ドル(約21兆5000億円)にも上り、搭乗飛行士が死亡する事故も2回起きた。そして、2011年7月21日に帰還した「アトランティス(Atlantis)」が最後のスペースシャトルとなった。

 その後、NASAの宇宙飛行士らはロシア語を学び、カザフスタンからロシアの宇宙船「ソユーズ(Soyuz)」で国際宇宙ステーション(ISS)へと向かった。この協力関係は、米国・ロシア両政府が政治的に対立していた時も続いた。

 だがこれは、暫定的な取り決めにすぎず、NASAはスペースシャトルに代わるカプセル型宇宙船の設計と製造を民間企業2社に委託していた。米航空宇宙機器大手ボーイング(Boeing)と新興企業のスペースXだ。

 それから9年後。南アフリカ出身の起業家で、歯に衣着せぬ発言で知られるマスク氏が2002年に設立したスペースXの宇宙船がいよいよ宇宙に飛び立とうとしている。マスク氏は、米電子決算大手ペイパル(PayPal)の前身企業と米電気自動車大手テスラ(Tesla)の創設者でもある。

 宇宙船「クルードラゴン(Crew Dragon)」への搭乗が予定されているのは、経験豊富な宇宙飛行士のロバート・ベンケン(Robert Behnken)氏(49)とダグラス・ハーリー(Douglas Hurley)氏(53)だ。ハーリー氏は、スペースシャトルの引退飛行でアトランティスを操縦した。

 スペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられるクルードラゴンはISSにドッキングし、ISSに滞在中のロシア人2人と米国人1人に出迎えられることになっている。(c)AFP