【5月27日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で大きな打撃を受けたカナダ・オンタリオ(Ontario)州の複数の老人ホームで、汚物の放置など「非常に憂慮すべき」不衛生状態が生じたり、不適切な介護が行われていたりしたことが発覚した。施設の要員不足を補うために派遣された軍兵士らの報告を26日、ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相が発表した。中には、寝たきりの高齢者が汚れたおむつの中に放置されていた例もあった。

 カナダで最も人口の多いオンタリオ州では、新型ウイルス流行がピークだった4月、老人ホーム5か所のスタッフ不足を補うために兵士らが派遣された。

 軍の報告書によると、こうした施設では感染対策が露骨に無視され、高齢者が「汚れたおむつがいくつも残されたベッドに放置されていたり」、助けを求めて泣いていたりとほとんど虐待に等しい「恐ろしい」状態が生じていたという。

 兵士らは「非常に多くの入居者の部屋で汚物による著しい汚染」を発見した。また汚れたおむつをはかされたままで皮膚病変が生じている高齢者もいた。さらに不正確な医療カルテや、家族にうその報告をしていた例も見つかった。

 究極の例では、ある施設でベッドに横たわった高齢者に食事を与えて窒息させてしまい、蘇生術を施したが死なせてしまった疑いも持たれている。

 また新型ウイルス検査で陽性と判定された入居者が施設内を歩き回ることを許され、他の入居者が感染リスクにさらされていた例も複数あった。看護師や介護士がマスクなどの個人防護具(PPE)を何時間も交換せずに、入居者の部屋から部屋へ移動していた例も複数あった。

 新型コロナウイルスによるカナダの死者は26日時点で約6700人に上っているが、うち約80%を老人ホームの入居者が占めている。

 そうした状況下にある老人ホームを支援するため、オンタリオ州では300人近く、ケベック(Quebec)州では約1500人の軍の医師や看護師が派遣された。ケベック州の施設に関する報告書も27日に発表される見通しとなっている。(c)AFP