【5月27日 AFP】電気自動車で争うモータースポーツ、フォーミュラE(Formula E)のドライバー、ダニエル・アプト(Daniel Abt、ドイツ)が26日、所属チームのアウディ・スポーツ(Audi Sport)から解雇された。アプトは24日の慈善バーチャル大会で、自分でマシンを動かさずにプロゲーマーに操作を任せていた。

 アプトは、独ベルリンの旧テンペルホーフ空港(Tempelhof Airport)を舞台にしたレースで、3位でフィニッシュした。

 ところが、ここまでのバーチャルフォーミュラEシリーズで下から2番目の順位だったアプトが、レース中に大差のトップに立つ場面もあったことで、主催者や他のレーサーが疑いを抱いた。そして実際にシミュレーターを操作していたのは、オーストリアにいた18歳のプロゲーマー、ロレンツ・ヘーツィンク(Lorenz Hoerzing)だったことが発覚した。

 これによりアプトはレース失格となり、慈善団体への1万ユーロ(約117万円)の「強制寄付」も命じられた。現在27歳のアプトは、2018年に同じ会場で行われた現実のフォーミュラEレースでは優勝を果たし、2014年の選手権創設時から順調なキャリアを築いていた。

 アウディはこの件を重く受け止め、「品位と透明性、ルールの順守はアウディの最優先事項であり、ブランドに関わるすべての活動に例外なく当てはまる」と話してアプトを謹慎処分とすることを発表していたが、その後に同選手がチームを離れることが決まった。

 アプト自身も動画を公開して改めて謝罪する一方で、周囲をだますつもりはなく、バーチャルレースは現実のレースとは違うということを見せたかっただけだとも話している。

「仮想世界での罪が現実世界の結果となって現れた」「きょうチームと話し合い、ここからは別々の道を行くことになった」

 アプトは「これはゲームで、現実のレースとは全く違う。本物のフォーミュラEとはかけ離れている」と話し、何台もの車が折り重なっているバーチャルレースのある場面を紹介しながら「誰もが好き勝手に運転していた」と続けた。

 そして、「このレースを真剣に捉え、シミュレーターでの練習に多くの時間を注ぎ込んでいたドライバーもいる」としながらも、誰か若いシムレーサーに「自分の力を他の現実のカーレーサーたちに見せてもらいたかった」と説明した。(c)AFP