【6月7日 AFP】森林火災が猛威を振るったオーストラリアでは、鎮火後数か月たってもなお、被災者らがテントやガレージといった仮住まいで暮らしている。生活再建に立ちはだかるのは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)だ。

 ニューサウスウェールズ州ベンボカ(Bemboka)にある小さなブリキ小屋では、ある家族6人が冬を迎えつつある南半球の寒さに耐えている。おもちゃやベッドが所狭しと置かれたここで、アニータ・ローレンス(Anita Lawrence)さん(51)と5人の子どもたちは今年2月から暮らしている。

 シドニーから車で6時間のベンボカでは、半年たった現在も、多くの人がローレンスさんのようにどっちつかずの生活を送っている。

 火災前、ローレンスさんはタスマニア(Tasmania)州に住んでいたが、火災で家を新築するために準備していた木材が燃えてしまった。家族の新たな生活も灰と化した。

 ローレンスさんは新型コロナウイルスが流行する前、週に数日、地元の学校で子どもたちに園芸を教えていた。数か月にわたるロックダウン(都市封鎖)の間は、年金貯蓄で生計を立てた。携帯電話経由でインターネットに接続された1台のパソコンで、子どもたちの自宅学習を進めなければならなかった。

 現在、学校は再開しつつある。デービッド・クルック(David Crooke)さんら地元の人々が浴室や暖房、寝室などを増設してくれた。仮設ではあるが、新居を建てる方策を見つけるまで、ここで暮らすことができる。

■パンデミックで支援に遅れ

 世界の注目が森林火災からパンデミックに移ってから、援助に遅れが生じている。

 サウス・コーストの寄付調達チームのマシュー・ハッチャー(Mathew Hatcher)氏によると、ベートマンズベイ(Batemans Bay)近くの倉庫はかつて寄付品でいっぱいだった。

 ハッチャー氏は「われわれの元には順調に支援が寄せられていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し、寄付が止まった」と語った。

 また新型ウイルスによって、多くの組織がボランティアを引き上げざるを得なかったため、トラウマに苦しむ地元の人々へのメンタルヘルスの支援が後回しになっているとハッチャー氏は指摘した。

 森林火災後、ロレーナ・グラナドス(Lorena Granados)さん夫婦は、灰と化した店舗の前にローマの革製品と修理を扱う露店を出した。その後、仮設住宅に引っ越したが、ビジネスが軌道に乗り、生計が立てられるようになることを願っている。

「一日で家と仕事を失うなんて考えたこともありませんでした」と語るロレーナさんは、新型ウイルスによる影響で取引に遅れが生じているが、闘い続ける決意だという。

「たった一つの小さな商品が売れるだけで、毎日頑張り続けようという気持ちになるのです」とロレーナさんは言った。(c)AFP/Andrew LEESON