■「観光業のモノカルチャーは砂漠を生んだ」

 ポルトガル・リスボンの旧市街にある急坂で有名な観光地、アルファマ(Alfama)地区の住民、パウロ・ダシルバ(Paulo da Silva)さん(45)も同じ心配をしている。「悲しいことです。いいことなんて何もない」「外国人観光客がこの地区を活性化してくれたのに、今また全てが止まってしまうかもしれない」と話す。

 だが、リスボン中心部のバイロアルト(Bairro Alto)では、マスツーリズム(観光旅行の大衆化)反対運動に加わっているイタリア人建築家のファビアナ・パベル(Fabiana Pavel)さんが静けさを味わっている。この地区は、ナイトライフや民族歌謡ファドが聞ける店が集まっていることでも知られる。

「この(ロックダウン)期間が終わるのを残念がる時が来る」と言うパベルさんは、「私は観光に反対しているのではなく、行き過ぎに反対しているのです。今回の危機は、一つの産業だけに頼り切ってしまうことの危なさを証明している」と語った。

 ソーシャルワーカーのマルティ・クーソ(Marti Cuso)さん(30)は、自分が住むバルセロナ中心部が観光客に侵食され、その結果、地元の人々が追い出されているとして長年抗議の声を上げてきた。「私たちはずっと、街が破壊されてしまうと警告してきた」

 ロックダウン緩和で他の地区では小規模な店舗が営業を再開し、人の姿が戻りつつあるが、バルセロナの観光名所であるゴシック(Gothic)地区やランブラス通り(Las Ramblas)の店のシャッターは閉まったままだ。「残念ながら今、私たちは結果を目にしている」とクーソさんは言う。

「観光業だけのモノカルチャーが砂漠を生んでしまった」 (c)AFP/Daniel BOSQUE in Barcelona with Denis LOBROVIC in Dubrovnik and Thomas CABRAL in Lisbon