【5月31日 東方新報】中国内陸で2010年に最初に国家級開放新区として指定された重慶市(Chongqing)両江新区(Liangjiang New Area)が今、にわかに注目されている。

 新区では産業、人材、生活、生態の4つのハイレベル協力推進計画に従ってつくられた両江共同イノベーションゾーンに、西北工業大学(Northwestern Polytechnical University)重慶科創センター、北京理工大学(Beijing Institute of Technology)重慶イノベーションセンター、華東師範大学(East China Normal University)重慶研究学院など、21の国内外研究機関が進出、豊富な人材を送り込み、人文とスマートデジタル、科学技術の融合による共同イノベーションの実践と研究で成果を出している。

 例えば2020年2月、北京理工大学重慶イノベーションセンターは自動運転などに必要な自動車用ミリメートル波レーダープロジェクトを両江新区で実施。3年内に1億元(約15億円)以上の生産値をあげると予測されている。このセンターは、すでに長安汽車(Changan Automobile)、重慶紅宇精密工業など多数の企業、組織と全面的な協力関係を結んでおり、自動車レーダー、三峡ダム区周辺の災害観測など10余りの科学技術への応用を推進している。

 およその統計によれば、目下、両江共同イノベーションゾーンの21の大学、科学研究院で、すでに防疫、工業、環境保護、人工知能、応急救援、航空宇宙などの新興産業領域で大量の先進的科学研究が展開されているという。

 両江新区幹部の王志杰(Wang Zhijie)副書記は「両江新区がまさに新たな産業チェーンを形成しているところだ」と評価。両江新区の完璧なイノベーションシステムと広い技術応用を行える余地が、ハイレベル人材を呼び寄せる吸引力となっている、という。目下、両江新区は「留学報国基地」「欧米同学会」「両江デジタル経済産業園」などの国内外のハイレベル人材向け研修重点プラットフォームの建設も打ち出している。

 2019年11月、両江新区は正式に「人材強区戦略の実施、ハイクォリティ発展を推進に関する意見」を通達、「『両江人材』十条」などの政策によって、人材発展メカニズムの方法、政策、方式、プラットフォーム、サービス上のイノベーションを推進する。「科学研究と産業、産業とイノベーション、イノベーションと人材育成」の共同融合により、2022年までに両江共同イノベーション区は100プロジェクトを完成させ、発明特許400件を申請するという。

 また両江新区は4月下旬、四川省(Sichuan)の天府新区(Tianfu New Area)と戦略的協力協議に署名し、内陸開放のゲートウェイとしての戦略も打ち出した。両都市で交通、産業をリンクさせ、西部科学技術イノベーションセンターを共同で建設し、重慶・四川地域の二都市経済圏を形成し内陸開放の重要な戦略プラットフォームにするという。3月に両新区合同で二都市経済圏産業サミットを開催し、地域の地方政府、企業、産業組織がクラウドでリンク。このクラウド・リンクは業界内でも大反響をよび、当日は、39の四川・重慶地域の地方政府、1万以上の企業、産業組織と30万以上のネットユーザーが参加した。

 5月には、中国とシンガポールが重慶を拠点とする戦略的協力プロジェクト中新(重慶)互聯互通モデルプロジェクトの目玉事業の一つ、中新互聯互通国際スーパーコンピューターセンターが両江新区で完成。両江国際クラウドコンピューター産業園のためのデジタルインフラも整いつつある。

 いまや重慶は内陸でもっともイノベーションインフラが整えられた巨大な実験都市として世界にリンクしつつある。 (c)東方新報/AFPBB News