【5月30日 東方新報】先月26日から29日にわたり、中国の全国人民代表大会常務委員会で著作権法修正案が審議された。

 著作権法の改正は2017年に続いて3度目。インターネットが生活の一部として浸透するにつれ、「盗版」と呼ばれるコピー製品や、映像作品の無断アップロード、コンテンツの無断シェア、転載などによる著作権侵害は増えているが、拡散の仕方が多様で複雑であり、侵害の証拠も隠蔽(いんぺい)しやすく、侵害による損失も把握しにくい。著作権侵害を訴えようにも調査コストがかかり、訴訟でたとえ勝訴しても、その賠償額は労力に見合わないほど低かった。結果的に侵害された権利人の方が泣き寝入りせざるを得ないことも多い。


 こうした問題については、2005年ごろから中国では社会問題として議論され、司法当局は2012年から著作権法の修正に取り組んできた。だが、小説や映画作品のファンが個人ブログなどで行う「二次創作」や、商業目的でない引用やコピーなど、グレーゾーンも存在し、また、アプリケーションも多様化し、例えば投稿動画の取り扱いなども考えねばならず、法改正がなかなか追いついてこなかった。今年、ようやく正式に草案が全人代常務委員会に提出されるまでこぎついた。草案は4月30日に公開され、パブリックオピニオンを募集する。

 新たな草案の目玉は、懲罰的賠償制度を導入し、賠償額の法定上限額を大幅に引き上げた点だ。草案によれば、著作権およびそれに関する権利を侵害した場合、権利侵害者は権利人の実際の損失額に照らし合わせてその賠償を支払わねばならない。実際の損失額の計算が難しい場合、権利侵害人の違法所得を賠償金とする。また権利人の実際の損失も権利侵害人の違法所得も計算が難しい場合は、それが故意であったり悪質であったりする場合、著作権使用許可料を参照にして、その5倍以下の賠償金を支払うこととする。賠償金の上限は現行法の10倍にあたる500万元(約7540万円)以下とした。

 また権利人が侵害を受けた証拠を立証する立証責任の倒置条項を盛り込んだ。訴訟を起こす場合、侵害を受けたことを立証するための財務帳簿や法的証拠の提供が義務付けられているが、これを提供しない場合も、法院は権利人の主張と証拠を聞いたうえで賠償額を確定することができる。権利人の示す証拠が不十分であっても、法院の調査でその権利の侵害があると明確にし、法に依拠して賠償額を確定することができる。権利人の訴訟権利を一層保障し、司法の判断力をより重視する設計にしている。

 このほか映像作品の権利は現行法では50年だが、修正案では文学、美術、音楽などの権利と同様、製作者の死後50年とした。著作権を侵害しない「合理的使用」の範囲も、「元の作品の正常使用に影響をあたえず、著作権人の合法権益に非合理的損害を与えてはならない」ことが求められ、具体的に著作物の「合理的使用」例を12の状況下で厳格に規定している。一方、コンピューターソフトの著作権の定義紹介とその保護についての部分が抜けている、という指摘もある。

 インターネットユーザー9億人時代を迎え、中国の社会、経済はインターネット無しに成立しないほど浸透しているが、依然としてネット上の著作権保護の困難さが、デジタル強国化の一つの大きな障害でもあった。この法整備は、これまで違法コピーや無断使用に泣かされてきたクリエイターたちの権利を保護するだけでなく、中国のインターネットとデジタル産業のさらなる発展につながると期待されている。(c)東方新報/AFPBB News