【5月24日 AFP】新型コロナウイルスの最初の流行地となった中国・武漢(Wuhan)のウイルス研究所では、現地のコウモリから採取した3種の生きたコロナウイルス株を保管していたが、今回世界中を混乱に陥れた新型とはどれも一致しないと、同研究所長がインタビューで述べた。

 世界で34万人を死に至らしめた新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」は、元の宿主がコウモリで、そこから他の哺乳類を介して人間に伝染したと科学者らは考えている。

 武漢ウイルス研究所(Wuhan Institute of Virology)の王延軼(Wang Yanyi)所長は13日に録画され、23日夜に放映された中国国営の英語放送CGTNのインタビューで、新型ウイルスは同研究所から流出した可能性があるとする米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領らの発言は「全くの作り話」だと反論。

 さらに「現在われわれの手元には3種類の生きたコロナウイルス株があるが、SARS-CoV-2に最も近似しているものでも、79.8%しか一致しない」と言明した。

 武漢ウイルス研究所では2004年から石正麗(Shi Zhengli)教授が率いるチームが、約20年前に流行した「重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染源追跡」に焦点を当てた、新型とは別種のSARSコロナウイルス(SARS-CoV)の研究を行っている。

 王所長は「新型コロナウイルスの全ゲノムは、SARSコロナウイルスと80%しか一致しない。明らかな違いだ」とし、「これまでの石教授らの研究では、SARSコロナウイルスとの近似性が低いウイルスについては注目されてこなかった」と述べた。

 新型ウイルスの流行に武漢ウイルス研究所が関係しているという陰謀論的なうわさは数か月にわたってインターネット上で流布していたが、より公式な場で取り沙汰されるようになったのは、トランプ氏やマイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官が同研究所から流出したという証拠があると言ってこの説を持ち出してからだ。

 新型ウイルスについて武漢ウイルス研究所では、昨年12月30日に未知のウイルスのサンプルを受け取り、このウイルスのゲノム配列決定に至ったのが今年1月2日で、世界保健機関(WHO)に報告を提出したのが1月11日だと説明してきた。

 王所長はインタビュー内で、12月にサンプルを受け取るまで新型ウイルスは「見たことも、研究したことも、保管したこともなかった」と述べ、「事実、他の誰もがそうであるように、われわれもこのウイルスの存在を知りもしなかった」「保管していないものがどうやって流出し得るのか?」と問い返した。(c)AFP