【5月24日 AFP】新しいバーテンダーは無口で動きも機械的だが、感染の心配が一切ない方法でビールを注いでくれる──市民が再び自由を楽しみ始めたスペイン南部セビリア(Seville)のバーに、「ビア・カート(Beer Cart)」と名付けられたロボット・バーテンダーが登場した。

 スペイン政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために2か月にわたって実施してきたロックダウン(都市封鎖)を緩和し、国内の約半分の地域ではバーやカフェが屋外席のみの営業を許可されるようになった。

 バー「ラ・ヒタナ・ロカ(La Gitana Loca)」の中央に座る大きなロボットは、「フック船長(Captain Hook)」のようなかぎ爪型になった腕をすっとビールディスペンサーに伸ばし、プラスチックのコップを1つ取る。そしてタップの下にコップを斜めに入れ、少しずつ傾きを起こしながらビールで満たす。ビールはカウンターに置かれ、客がそれを持っていく。

 カーニャと呼ばれるグラスサイズの生ビールを提供するロボット・バーテンダーは、デビューからまだ1週間ほどしかたっていないが、客や好奇心旺盛な見物人を次々と引きつけている。グラスビールは200ミリリットルで0.7ユーロ(約80円)だ。

 新型コロナウイルスによる死者が2万7700人を超えたスペインでは、ロックダウンの緩和に非常に慎重な姿勢を取っている。バーやカフェは席数を減らし、厳しい衛生基準の下で営業を再開した。

 ラ・ヒタナ・ロカの経営者、アルベルト・マルティネス(Alberto Martinez)さんは、新型コロナウイルスの流行前にロボットスタッフによる売り上げ増を見込んでその購入に至った。

 その後、新型ウイルス危機が起き、ロボットを使用する機会がなかったが、対人距離を確保しなければならない新しい環境に、ロボット・バーテンダーは理想的だろうと思っていた。

 マルティネスさんは「ロックダウン緩和の第1段階で店を再開するのに、このロボットは最適だと思った」「(バーでは)客と物が接触しないようにするために、ロボットが使い捨てコップにビールを注ぐのが良いと気付いた。要するに全てセルフ・サービスだ」とAFPに述べた。

 とはいえ、屋外のテラス席には一度に12人の客しか入れないようにしているため、利益を上げるには程遠い。「許可通りわずかな席のために店を開けていても、現時点では利益がない。それでも他のバーと競争しなければならないから、周りと違うことをする必要がある」とマルティネスさんは語った。(c)AFP/Jorge GUERRERO