【5月21日 AFP】(更新、図解追加)今世紀最強のスーパーサイクロン「アンファン(Amphan)」の直撃を受けたバングラデシュとインド東部で、21日夜までに84人の死亡が確認された。当局が発表した。ある当局者は、「ここまでの規模の災害は見たことがない」と話している。

 家屋の倒壊や洪水で車が流されるなどの被害も相次ぎ、新型コロナウイルス感染の脅威の中、数百万人が限られたスペースに身を寄せ合って避難している。

 20日夜にインド東部に上陸した「アンファン」は、約46メートルの強風を伴い、木々や電柱、家々の壁や屋根を吹き飛ばした。変電所の爆発事故も発生し、当局は21日朝から被害状況の確認に追われた。

 インド・西ベンガル州の州都コルカタでは、洪水が発生し、車が窓の位置まで水に沈んだ。マムター・バナルジー(Mamata Banerjee)州首相は地元メディアに、州内で少なくとも12人が死亡したと明らかにし、「アンファンの被害はコロナウイルスよりひどい」と述べた。

 また、バングラデシュ当局は、倒木の下敷きになった5歳男児と75歳男性、水死した救助ボランティアら少なくとも10人が死亡したと発表した。

 両国では、数百万人が停電に見舞われている。

 サイクロンの直撃を受けた地域には、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されている「スンダルバンス国立公園(Sundarbans National Park)」がある。マングローブの低木林で知られ、絶滅危惧種に指定されているベンガルトラの生息地でもあり、両国当局は野生動物たちの安否を気遣いつつ現地からの被害報告を待っているという。

 サイクロン上陸前に沿岸部の住民300万人以上が避難したため、過去のサイクロン被害のような多数の犠牲者は出ていないが、避難所の密集環境で新型コロナウイルスの感染が拡大する恐れが指摘されている。

 当局は各避難所にマスクや消毒薬を配布しているが、避難所となっている学校や政府庁舎、コミュニティーセンターには避難者がひしめき合っており、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)は不可能な状態だ。

「アンファン」はバングラデシュ沿岸を進み、勢力を弱めつつも同国南東部コックスバザール(Cox's Bazar)周辺に豪雨と強風をもたらしている。コックスバザールには、ミャンマーから軍の迫害を逃れてきたイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)およそ100万人が暮らす難民キャンプがある。(c)AFP/Sam Jahan with Sailendra Sal in Kolkata