【5月23日 東方新報】「さあ、ここから追い込みだ。みんな頑張って美しいボディーを作ろう! ワン・ツー、ワン・ツー」スマホやパソコン画面の中から檄(げき)を飛ばすトレーナーに合わせ、自宅で汗を流す。中国では今、そんな「オンラインフィットネス」が広がっている。

 新型コロナウイルス感染症が拡大中、外出禁止やフィットネスクラブの休業が続き、運動不足の解消策として「自宅フィットネス」が流行。筋トレやダンス、ヨガ、ダイエットなど、フィットネスクラブと同様に多彩なプログラムが体験できるが、課題も見えてきている。

 中国では経済成長に伴い、都市部を中心にトレーニング熱が高まっていた。フィットネス業界は毎年10%以上の成長を続けており、2018年には1000億元(約1兆5139億円)規模の産業に発展。利用者は20~30代が8割近くを占めている。会費不要が売りのフィットネスクラブ「超級猩猩(しょうじょう)(Supermonkey)」が躍進し、オンラインでトレーニングプログラムを提供するアプリ「Keep」も2017年には登録ユーザーが1億人に達していた。

 そして今年に入り、新型コロナウイルスが中国全土で猛威を振るうと、フィットネス業界はこぞってオンラインフィットネスに力を注いだ。「Keep」は朝から晩まで自宅レッスン用ライブ動画のプログラムを作ったほか、国内スポーツを管轄する国家体育総局と組んで無料の「1週間トレーニング」プログラムを配信し、テレワークをするサラリーマン向けプログラムも作った。「超級猩猩」が配信したレッスンには、最大で28万人が参加した。外出禁止が続き国民のフラストレーションがたまらないよう、政府も「おうちトレ」を奨励した。

 中国では新型コロナウイルスはおおむね収束したが、自宅で空き時間を使って気軽にできるオンラインフィットネスは今後も定着しそうだ。フィットネス大手「SHAPE」は今後2年間、オンライン収入が全体の20~30%を占めるとみている。

 大手フィットネスクラブ以外に、独自に中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」、通信アプリ「微信(ウィーチャット、WeChat)」、ショートムービーアプリ「抖音(Douyin)」を使い、自宅向けレッスンをする個人やグループも増えている。現役やOBの五輪メダリストやスポーツ界のスターらがレッスンするプログラムも続々登場し、オンラインレッスン界の「ネットスター」も誕生している。

 一方、雨後のたけのこのように次々とコンテンツが乱立し、課題も浮上している。「1回10元(約151円)」と低料金をうたい、トレーニング内容に中身がないようなコンテンツも出てきている。また、自宅で、一人でレッスンするため、「見よう見まねで動いて、腰を痛めた」というような報告も増えている。このため「玉石混交のプログラムを改め、利用者が健康的に利用できるよう、行政の管理、監督が必要だ」という指摘も出ている。まだまだ伸びしろがあるとみられるオンラインフィットネスだが、問題点をどこまで克服できるかが成長の鍵となる。(c)東方新報/AFPBB News