【5月20日 AFP】ハンガリー議会は19日、中国の融資で自国とセルビアの首都を結ぶ高速鉄道事業の詳細を向こう10年間にわたって機密扱いとする法案を採決した。

 ハンガリー史上最大のインフラ投資とうたわれるこの高速鉄道事業は、同国の首都ブダペストとセルビアの首都ベオグラードを結ぶ既存の線路を更新するもので、法案は「最も重要な公益」と表現している。

 この鉄道事業は、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が進める野心的な経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」の一環で、ギリシャで中国が運営するピレウス(Piraeus)港と中欧を結ぶ鉄道網の一部として計画されている。アナリストらによると、欧州連合(EU)内で中国が支援する最初の大規模鉄道事業となる。

 法案は、契約の詳細を開示すれば「ハンガリーが外国から不当な影響を受けずに外交政策や貿易利益を追求する能力が脅かされる」恐れがあるため、10年間の機密扱いが必要だと述べている。

 ハンガリーが中国輸出入銀行(China Exim Bank)と交わした契約によると、ハンガリーはこの事業の投資費用の85%に当たるうち少なくとも推計20億ユーロ(約2400億円)を借り入れ、残りの15%を自己資金で賄うことになっている。

 ハンガリー政府は過去に、中国輸出入銀行から必要な資金の融資を受けるには、事業詳細を機密にする必要があると述べていた。新法によると、ハンガリー政府は「中華人民共和国政府の見解を聞いた上」であれば、プロジェクト関連文書の開示を決定することができるという。

 一部では、この投資はハンガリーの内政問題に関する発言権を中国に与える恐れがあり、またハンガリーの納税者に莫大(ばくだい)な負担を課すものだとの批判も上がっている。

 批判勢力はまた事業の収益性に疑いの目を向けると同時に、ハンガリー区間350キロの建設に伴う汚職のリスクも指摘している。この鉄道建設の一部はオルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相に近い企業が担うとされている。

 習主席が推し進める「一帯一路」は、中国製品を西へ向かって輸送するルートを建設する1兆ドル(約110兆円)規模の世界的インフラ事業だが、米国や西欧諸国は中国が国際的な影響力を強めるための貿易計画とみなしている。一方でイタリアやポルトガル、ギリシャ、東欧諸国のいくつかはこの事業に参加している。(c)AFP