【5月22日 AFP】黒塗りの車に乗って、執事が高級料理を配達する──。タイの超富裕層は、国を封鎖し、経済を圧迫し、何百万もの人を失業者にした新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)中でも、ぜいたくを忘れることはない。

 タイは世界で最も不平等な国の一つだが、貧富の差は新型ウイルスによってさらに広がった。多くの人が職を失い、政府による現金給付には2200万人が登録した。

 バンコクでは毎日、食料配布に数百人が列をなしている。今年の経済成長率は1997年のアジア危機以来最悪水準となるマイナス6%超落ち込む見通しだ。

 タイでは4月に夜間外出禁止令が出された。パンデミックはバンコク富裕層にも移動制限による不便さをもたらしたが、彼らの「豊かなライフスタイル」が終わることはない。

 コンシェルジュサービスを提供する「シルバー・ボヤージュクラブ(Silver Voyage Club)」は、顧客の要望に応えるためにサービスを一新し、一流レストランの高級料理の配達を始めた。

 創業者であるチャカパン・ラッタナペット(Jakkapun Rattanapet)氏は、こうしたサービスは銀行口座に「少なくとも100万ドル(約1億800万円)」を保有する人への特典プログラムの一環だと説明した。

 チャカパン氏は、海外出張が中止になる人が多くコンシェルジュ事業が激減したため「ホワイトグローブ・デリバリー(White Glove Delivery)」を立ち上げた。

 このサービスでは和牛、シーフード、点心などを約20店のレストランから提供。これらには、高級ホテルの付属レストランや、格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」で星を獲得している店舗も含まれている。

 顧客は企業幹部やセレブリティーらで、丁寧に包装された高級料理が企業の本社やバンコクの高級住宅街の家政婦らに届けられる。白い手袋をはめた執事が、テーブルのセッティングや料理の紹介を行うこともある。

 チャカパン氏によると、ホワイトグローブは新型コロナウイルス感染症との闘いの一環として、1日あたり1000食を医療従事者に寄付している。

 米経済誌フォーブス(Forbes)によると、タイには27人の億万長者がいる。首位は農業・食品複合企業CPグループ(CP Group)を率いるチャラワノン(Chearavanont)一族で、資産額は273億ドル(約3兆円)と推定されている。

 チャラワノン一族は先月、プラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相から超富裕層に出された協力要請に応じ、国の経済破綻を食い止めるため政府に2900万ドル(約31億2000万円)を拠出すると述べた。(c)AFP/Dene-Hern CHEN