【5月20日 AFP】「うわあ、君のシャツすごく透けてるね。下着もそれとおそろいなの?」と男性が言った。

 これはバーチャルリアリティー(仮想現実、VR)のシミュレーションだ。だがヘッドセットを装着しているエリザベス・リー(Elizabeth Lee)さん(23)は、場面が展開するにつれ、ショックを受けて言葉を失った。

 このVR技術は、シンガポールでセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に反撃する女性らを助けることを目的とした「ガール、トーク(Girl, Talk)」プロジェクトの一環だ。

「自分は、もっと相手に対決する反応を示すかと思っていた」とリーさんは認める。「体がとても近くに感じられて…あんな露骨なことを言われて、むかむかした」

 シンガポールでは、シンガポール国立大学(NUS)の学生が寮のシャワー室で盗撮の被害を受けた話をインスタグラム(Instagram)に投稿して以来、大学で性的嫌がらせが重大な問題となっている。

 被害者のモニカ・バエイ(Monica Baey)さんは、加害者はあまりにも軽いとがめ立てで免れたと思い、これを公にする決心をした。彼女の行動は、シンガポールにおけるセクシュアルハラスメントの告発運動「#MeToo(私も)」と呼ばれている。

 王乙康(Ong Ye Kung)教育相が昨年5月に議会に提出した情報によると、シンガポールの6大学では2015年から2017年の間に学生に関係した性的不品行が56件起きている。

 だが多くの学生はAFPの取材に対し、実際の発生件数はこれよりはるかに多く、その多数は報告されていないと語る。

「ガール、トーク」を立ち上げたのは4人の女性。シンガポール南洋理工大学(Nanyang Technological University)のダネリア・チム(Danelia Chim)さん、シオウ・ユンロン(Seow Yun Rong)さん、ヘザー・シート(Heather Seet)さん、ドーン・クワン(Dawn Kwan)さんだ。4人は「#MeToo」運動は意識啓発にはなったが、さまざまな状況でどのような最善な対処ができるのか、「セクハラ被害者に必要な備えをさせる」動きにはほとんどつながっていないと感じていた。