■新型ウイルス危機を利用?

 新型ウイルス危機が始まって以来、AFPのファクトチェック部門はフェイスブック(Facebook)、ワッツアップ(WhatsApp)、インスタグラム(Instagram)などの媒体で広まっていた多数の「反ゲイツ」のうわさについて、誤りであることを証明してきた。これらのうわさは英語やフランス語、スペイン語、ポーランド語、チェコ語などの多様な言語で広まっていた。

 米連邦捜査局(FBI)がバイオテロの容疑でゲイツ氏を逮捕したという主張や、アフリカの人々を毒殺しようとしている欧米諸国の陰謀を同氏が支持しているというものなど、いくつかのデマには共通点がある。一様に、ゲイツ氏が「人々を支配」したり、ワクチンで金もうけしたりするために、新型ウイルス危機を利用していると非難しているのだ。

 フィンランドのヘルシンキ大学(University of Helsinki)で社会科学を研究するキンガ・ポリンチュクアレニウス(Kinga Polynczuk-Alenius)氏は大学のブログで、ゲイツ氏は表立ってドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を批判している他、ワクチンの開発支援もしていると指摘。これによって同氏は「テクノロジーと(医療)科学の交差によって生じた危機において、うってつけのスケープゴート(責任転嫁の対象)」になったと書いている。

 ゲイツ氏が陰謀論者らの犠牲になるのはこれが初めてではない。2015年にブラジルでジカウイルスが流行した際には、流行に対する責任があるとして複数の欧米諸国の有力者が非難されたが、この中にゲイツ氏も含まれていた。また、ネットで昔から人気があるうわさには、ゲイツ氏の正体は実はトカゲだったというものもある。(c)AFP/Julie CHARPENTRAT