【5月19日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって、世界保健機関(WHO)から台湾が締め出されている問題に改めて注目が集まり、米国主導で台湾のWHO加盟かオブザーバー参加を認めるよう要求する国々が増え、中国と一部の欧米諸国の間で外交摩擦が起きている。

■なぜ台湾はWHOから排除されているのか?

 台湾(正式名称は中華民国)は、WHOが1948年に設立された当初は創設メンバーとして加わっていたが、国連(UN)の「中国」の代表権が中華人民共和国に移った翌年の1972年にWHOから締め出された。

 中国国民党が中国共産党との内戦に敗れ、台湾に逃れた1949年以降、台湾と中国は別々に統治されてきた。中国政府は台湾を自国の領土と見なし、必要なら実力行使してでも台湾を奪うと宣言。台湾が国際社会に主権国家として認められることに反発し、近年、台湾に対する経済的・外交的・軍事的な圧力を強めている。WHOなどの国際機関からの締め出しも、その一環だ。

■台湾はずっと排除されてきたのか?

 そうではない。2009~2016年の間は、中国政府は台湾に対し、「中華台北」という名前でオブザーバーとしてWHO年次総会の世界保健総会(WHA)に参加することを許可していた。

 この当時は台湾政府と中国政府は今よりも友好的な関係を築いていたが、関係が冷え込んだのは、2016年に現職の蔡英文(Tsai Ing-wen)総統が選挙で当選を果たしてからだ。

 蔡氏が所属する党は、台湾を事実上の独立国と見なしており、台湾を中国の領土の一部とする「一つの中国」という方針を掲げる中国政府の考えには同意していない。

 WHOへの加盟を求める台湾政府の要請には外交的な支持がこれまでほとんど集まらなかったが、その流れを劇的に変えたのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。

 中国は、新型ウイルスへの初期対応と、独裁的な政府のせいでこの病気が世界中に広がったのではないかという疑いをめぐり、疑問の目を向けられるようになった。

 それとは対照的に、民主的な台湾は5月18日時点で死者7人、感染者440人しか出しておらず、新型コロナウイルス感染症への対応が模範的だとして評価を受けている。