【5月19日 AFP】重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者の抗体が、新型コロナウイルスの感染を阻止するとした研究論文が発表された。実験結果について研究者らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法を模索する上で新たな突破口となりうるとしている。

【図解】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の探究

 スイスと米国の研究チームは2003年、774人の死者を出したSARS流行後に感染患者から抗体を採取していた。

 研究チームは、ウイルスの特定のスパイクタンパク質を標的とする25種類の抗体を用いて、新型コロナウイルスによる細胞への感染を防ぐことが可能かどうかを確認する実験を行った。SARSとCOVID-19は、どちらもその病原体が動物由来と考えられるコロナウイルスで、構造が類似しているとされる。

 実験の結果、研究チームはウイルスと感染細胞の両方に結合できる抗体を8種類特定できた。候補の一つは「S309」と呼ばれる抗体で、ウイルスに対して「特に強力な中和活性」を持つことが明らかになった。

 実験では、S309とより作用の弱い抗体を組み合わせて用い、ウイルスのスパイクタンパク質の異なる部位を標的とした。これにより、スパイクタンパク質が変異する可能性を低減できた。

 英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された今回の研究では人に対する実験は行われていないが、研究チームは今回の成果について、SARS抗体が新型コロナウイルスの深刻な感染や拡散を阻止できることの「概念実証」を提示すると説明している。(c)AFP