【5月30日 AFP】米国の大学の授業料は年間数百万円と高額であるケースが多い。しかし、新型コロナウイルスが流行し、ズーム(Zoom)などのビデオ通話サービスを使った授業が行われている現状において、学生らは年間7万ドル(約750万円)もの授業料を払うことの正当性に疑問を抱いている。学生らの多くは、莫大(ばくだい)な学費ローンを抱えていることも多いのだ。

 こうした状況に「不公平な扱い」を受けていると感じ、学生らがその責任を大学側に求めはじめている。

「私たちが払う授業料には、キャンパスで提供されるデジタル化できないサービスも含まれている」──そう主張するのは、ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)で公衆衛生学の修士号を目指すドュルミル・シャー(Dhrumil Shah)さん(24)だ。2年間の修士課程の授業料を一部ローンに頼っていた彼は、大学に何らかの払い戻しを要求する嘆願書の一つに署名した。

 米首都ワシントンの大学では、新型ウイルスの感染拡大を抑制するために発令された外出禁止令によって遠隔で授業が行われているが、シャーさんはその結果として授業の構造や監督指導が失われてしまっていると述べ、対面性が持つ重要性が欠けるために授業が「劇的に」非生産的になっているとした。「これでは失敗体験になってしまう」

 彼だけではない。多くの学生が、キャンパスでフリスビーを楽しむ午後、ハイテク機器のそろった研究室での授業、クレージーな夜のパーティーといった米国の大学ならではの経験が失われていると嘆いているのだ。

 不満を裁判に訴えた学生もいる。AFPが確認したところでは、アデレード・ディクソン(Adelaide Dixon)さんは、オンラインコースや合否判定システムによって得た卒業証書は「価値が低い」として、マイアミ大学(University of Miami)を訴えた。彼女を代表とする約100人の学生らは、大学側に数百万ドルの賠償を求めている。学生が大学側を同様の理由で訴え出た裁判は、少なくとも全米の50校で起きている。