【5月17日 People’s Daily】ペルシャ湾のジュバイル工業港から時速約20ノットの連絡船に乗って30分。中国企業「中交疏浚集団公司」がサウジアラビアで手がけるベリー人工島の造営現場にたどり着く。

 浚渫(しゅんせつ)船「力竜号」の平たい甲板には無数のクレーンやパイプが並び、船体から伸びるアームを使って工事が進む。パイプの中には大量の砂と石が詰まっている。力竜号は1時間もあれば通常のサッカー場に2メートルの盛り土をする能力を備える。この10年間で、中国疏浚がサウジアラビア国内のプロジェクトで埋め立てた面積は3035万平方メートルに上り、使用した砂は1.6億立方メートルに達する。

 国土に砂漠が多いサウジアラビアにとって、海の埋め立ては国の発展を図る重要な取り組みで、ベリー人工島はその代表的プロジェクトだ。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、中国企業は厳格な防疫措置を取りながら安定した工事を進め、各方面からの称賛を勝ち取っている。

 感染症の発生以降、中交疏浚を含む中国企業とサウジアラビア国有会社「サウジアラムコ」は共同して防疫措置を進めてきた。ジュバイル・ヤンブー王室委員会工業投資部門の責任者アブドラ・アブダリさんは「中国企業の行動は素早く、なおかつ緻密だった。中国国内でウイルスを抑制した手法を手本にプロジェクトを確実に前進させてくれた。わが国への貢献は非常に大きい」とたたえる。

 感染症が流行する間、中交疏浚はベリー人工島関連で3件のプロジェクトを受け持ち、その生産額は3000万ドル(約32億円)に上る。

 人工島南方の海を望むと、漁網のように連なり、2000メートルに及ぶ浮遊物が見える。埋め立て工事により海を汚さないようにする汚染防止カーテンだ。プロジェクト責任者のムハンマド・アリさんは「防止カーテンによる汚染防止効果は90%を超えている」と話す。

 ベテラン潜水士のサーレハさんは環境保護部門の要請を受け、チームを率いて埋め立て周辺海域に潜り、地質サンプルを取っている。海から上がったサーレハさんが、水深15メートルで撮影したビデオ映像を見せてくれた。青く澄んだ海、揺れるサンゴ、自由に行き交う魚の群れ。サーレハさんは「撮影データが環境評価報告のもとになる。中国企業の環境保護の水準は極めて高い」と太鼓判を押す。

 プロジェクトの上級技師ムハンマドさんは「中国企業はプロジェクトを始める段階で『ウミガメの産卵や海草の成長に影響を与えない』と表明し、私たちに深い印象を与えた。環境保護を重視する姿勢に感心した」と振り返る。

 力竜号から200メートル離れた場所では、中交疏浚の下請けを担うオランダ・ボスカリス社の浚渫船が人工島の南島の浚渫作業をしている。仕事を終えた力竜号の船員が連絡船で引き揚げる時、太陽神号の技師と連絡を取って情報交換をする。感染症防止のため、両社の中心メンバーが直接会う機会は以前より減らしているが、ソーシャルネットワークでグループを作り、常に連絡を取り合っている。

「両社の優れた点を補い合っており、今後の見通しは明るい」と話すのは、ボスカリスの技師ファン・ダイクさん。オランダの国土の20%は数百年にわたり海を埋め立てて生まれたもの。オランダ企業の経験は豊富な上、ペルシャ湾の主要港周辺水域の地質も熟知している。ボスカリス社は大型自走浚渫船も擁している。ファン・ダイクさんは「私たちの企業が協力することでコストも大きく節約できる。ウィンウィンの関係を実現している」と話す。(c)People's Daily/AFPBB News