【5月17日 AFP】ロシアで2018年、姉妹3人が性的虐待や暴行を長年繰り返した父親を殺害した事件で、連邦捜査委員会(Investigative Committee)が検察当局の意向に反し、姉妹を殺人容疑で立件する方針を固持していることが分かった。姉妹の弁護人が13日、明らかにした。

 長女のクリスティーナ・ハチャトゥリャン(Krestina Khachaturyan)容疑者、次女のアンゲリーナ(Angelina Khachaturyan)容疑者、三女のマリア(Maria Khachaturyan)容疑者は2018年7月、モスクワ市内の自宅で父親のミハイル(Mikhail Khachaturyan)さんを刺殺。姉妹は当時、それぞれ19歳、18歳、17歳だった。

 このうち殺人容疑が掛けられているクリスティーナ容疑者とアンゲリーナ容疑者は有罪となった場合、最大で禁錮20年が言い渡される可能性がある。

 ミハイルさんは3姉妹をレイプしたり、虐待したりした他、学校へ行くことを禁じていたとされる。この事件は、姉妹の凄惨(せいさん)な生き様の詳細が明るみに出たことで注目を集め、姉妹を支持する激しい抗議デモを引き起こした。

 検察当局は今年1月、父親の「計画的」な虐待を捜査当局が考慮しなかったとして、姉妹を不起訴処分とした。この決定は、ロシアの市民社会にとって大きな勝利となり、他の女性たちを救う法的先例にもなるとみられていた。

 しかし、クリスティーナ容疑者の弁護人は13日、重大犯罪の捜査を担当する連邦捜査委員会が「検事総長室の見解を無視すると決定」したと説明。AFPに対し、検察側が見解を曲げることはないだろうとの期待を示し、両者が合意しない限り姉妹が起訴されることはないと述べた。

 連邦捜査委員会や検事総長室からのコメントは得られていない。

 連邦捜査委員会は、姉妹が父親を刃物やハンマーを使って父親を殺害したとして、クリスティーナ容疑者とアンゲリーナ容疑者を計画的殺人の罪で起訴するよう勧告していた。

 弁護人や活動家らは、姉妹が自分たちの命を守るため、やむなく父親を殺害したと主張。ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者に対する国内での法的保護が不十分であると指摘していた。(c)AFP