【5月16日 AFP】香港在住のウォン・メイイン(Wong Mei-ying)さん(70)にとっては、新型コロナウイルスが大流行しようとも、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)などはなから不可能な話だ。2畳半ほどの広さの部屋に、息子(43)と2人で暮らしているのだから。

 ウォンさん親子は、世界で最も人口密度が高いとされるビル群の一つにある、香港の有名な「極小住宅」に住んでいる。

 普通なら1世帯の居間ほどの面積に、薄いプレハブの壁で仕切られた6つの小部屋が設けられている。ここに計12人が住んでおり、台所とシャワーは共用だ。

 ウォンさん親子が暮らす部屋の中には2段ベッドが置かれており、ウォンさんが下で、息子が上で眠る。

 キリスト教系福祉団体の関係者はAFPの取材に対し、こういった建物では換気や排水が悪く、ウイルス感染の「リスクが高い」と話した。

 ウォンさんの部屋の家賃は、月2000香港ドル(約2万8000円)。香港では、これでも最も狭い部類に入らない。

 当局の2016年の調べによると、2畳半程度からそれ未満の広さの極小住宅に住む人が、推定でおよそ20万人いたという。

 香港は、数字の上では世界で最も富裕な都市の一つだ。しかし住民は、まん延する不平等や、深刻な住宅不足、高額な家賃に苦しみ、歴代政府はこういった問題を解決できずにいる。(c)AFP/Yan ZHAO