【5月16日 Xinhua News】中国貴州省(Guizhou)銅仁市(Tongren)徳江県(Dejiang)煎茶鎮の川岩村に住むトゥチャ族の郎興英(Lang Xingying)さん(46)は、7年前まで「肉牛」と「ミミズ」の組み合わせが農業汚染問題を解決し、これほどの経済効果を生み出すとは思ってもいなかった。牛ふんがミミズの「大好物」であることに気付いてから人生が一変。今では循環型農業を指導する立場になった。

 村は武陵山の奥地にある貧困地帯で、当時はどの家でも牛を飼っていた。郎さんはある日、牛ふんだらけの道で偶然、大量のミミズがふんに集まっている様子を目にした。「その後、インターネットで調べたところ、ミミズの養殖では牛ふんが飼料として適していることが分かった」と振り返る。ミミズの養殖は「稼げる商売」だと直感した郎さんは、5万元(1元=15円)をはたいて湖南省常徳市で養殖技術を学んだ後、川岩村でミミズの養殖業を始めた。

 養殖場の面積は5ムー(約0・33ヘクタール)で、通常は30日に一度の割合で出荷する。ミミズは魚釣りの餌として人気が高く、供給が需要に追い付かない状態。昨年の生産高は30万元近くに上った。ミミズが牛ふんを消化して排せつしたふんは有機肥料となり、果樹園や茶畑で使用されている。郎さんは「今年はこのような有機肥料を既に60トン売った。1トン当たり500元で売れた」と語った。

 2016年、ミミズ養殖の拡大に伴い、牛ふんが足りなくなると、牛の飼育も始めた。養殖場から近い場所に設けた牧場には、体格の大きい牛が35頭いる。郎さんは「ここで飼育した牛のふんを使って、ミミズを養殖する。既に一つの産業となっている」と説明した。

 「肉牛~牛ふん~ミミズ~有機肥料」という循環型農業モデルはこうして確立され、ミミズの養殖技術を学びたいと周辺の村から酪農家が続々と「弟子入り」した。郎さんの養殖場や牧場では現在、地元の村民5人を雇用している。

 そのうちの一人、粱祖成(Liang Zucheng)さん(56)は病気を原因とする貧困世帯だったが、ここ数年は郎さんが経営する牧場で牧草の手入れや牛ふん拾いなどの仕事をするようになり、1日80元の収入を得ている。それ以前はほそぼそと農業を営んでいたが、農作業より体に負担がかからず、収入も増えた。

 煎茶鎮牧畜センターの魯国権(Lu Guoquan)センター長によると、同鎮では現在、肉牛を飼育する牧場が30カ所を超え、ミミズの養殖場も6カ所に増えた。ミミズの養殖が、牧場の牛ふんによる環境汚染問題を解決するだけでなく、関連製品の付加価値も高める。山岳地帯で循環型農業を発展させるという有益な取り組みだといえる。

 同県復興鎮でも同様の取り組みが行われようとしている。16年から現地で肉牛の飼育業を手掛ける浙江省(Zhejiang)温州市(Wenzhou)の農業・牧畜企業は昨年、肉牛を4千頭以上出荷し、牛ふんを1トン当たり35元で周辺の県や市に販売した。今年は郎さんの循環型農業モデルに倣い、ミミズを50ムー(約3・3ヘクタール)分養殖する計画だという。(c)Xinhua News/AFPBB News