【5月31日 AFP】「スリッパを展示させてくれませんか?」──新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は今も続いているが、英国の博物館はすでにロックダウン(都市封鎖)下の生活を記憶するための証言や品々を集める企画を始めている。

「これは、極めてまれな非日常体験だから」とロンドン博物館(Museum of London)のシニア・キュレーター、ベアトリス・ベーレン(Beatrice Behlen)さんはAFPの取材に語った。「ロックダウンが実施されると知ったとき、私たちはすぐに将来のために何を集める必要があるか、話し合い始めました」

 英国の首都の歴史を扱うロンドン博物館は、新型ウイルス感染症流行下の生活を映し出す品々の寄付をロンドンっ子たちに募り始めた。

「例えば、毎日履いているお気に入りのスリッパのように、何か安心させてくれるアイテムの場合もあるかもしれない」とベーレンさん。これまでに収集されたアイテムの中には、自家製ジャムの瓶もあった。またロックダウン下の全国で毎週、医療・介護従事者への敬意を示すために行われた拍手の際に使われた手製のガラガラもあった。

 ベーレンさんは「私たちにとって興味深いのは、必ずしも物そのものではなく、その背後にある物語です」「人々にとって何か意味のある物でなければならない。そのために品々に関するエピソードも教えてもらいました」と言う。

 収集が難しいのは、人々の感情だ。家で自主隔離していたときの気持ち、喪失感や恐怖感、また安心や希望、愛といった感情もある。

 ある家族はロンドンの「住まいの博物館(Museum of the Home)」の呼び掛けに応え、食卓の前にスクリーンを設置し、ビデオチャットを通じて遠方の親戚と食事を共にした様子を記録した。別の家族はリビングルームを工房に改造し、医療スタッフのためのガウンを作った。