【5月15日 AFP】米国は14日、25年前にチベット仏教第2の高位者パンチェン・ラマ(Panchen Lama)に認定され、その後まもなく拘束された男性を解放するよう中国政府に改めて要求し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世(84)の後継者選びに介入しないようくぎを刺した。

 世界的な支持を得ているノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者で、亡命中のダライ・ラマは1995年5月14日、当時6歳だったゲンドゥン・チューキ・ニマ(Gedhun Choekyi Nyima)氏をパンチェン・ラマの生まれ変わりと認定した。

 パンチェン・ラマはその3日後に拘束され、以来、一度も姿が確認されていない。人権団体はパンチェン・ラマが「世界最年少の政治犯」になったとして、中国政府を非難した。

 米国務省で国際的な信教の自由問題を担当するサム・ブラウンバック(Sam Brownback)特使は、「中国当局に対し、パンチェン・ラマを解放し、自由にするとともに、彼の居場所を世界に知らせるよう引き続き圧力をかけていく」と述べた。

 ブラウンバック氏は記者団に対し、「中国共産党はダライ・ラマの後継者を指名する権利を主張し続けており、この問題への関心と注目が高まり、重要性を増している」と指摘。「中国共産党には、ローマ教皇の後継者を指名する権利がないのと同じように、ダライ・ラマの後継者を指名する権利はない」と述べた。

 無神論の立場を取っている中国政府は、ダライ・ラマの後継者指名を目指していくと公言している。ダライ・ラマがいなくなれば、チベットの自治権を回復する国際的な動きが弱まると期待しているのは明らかだ。

 ダライ・ラマは、多忙を極める各地の訪問を減らしているが、深刻な健康上の問題があるのかどうかは明らかにされていない。中国政府の計画を阻止するため、慣例を破るか思案しているとされる。後継者を生前に指名することや、自らの死と共にチベット仏教の宗教的伝統を終わりにすることに言及したこともある。後継者には少女を選ぶ可能性もあるという。

 中国政府が独自に任命したパンチェン・ラマは、厳格に行動を指示される中で公の場に何度か姿を現しているが、多くのチベット人は彼をパンチェン・ラマとして認めていない。(c)AFP