【5月15日 AFP】ロシアは14日、地方当局が国内の新型コロナウイルス死者数をかなり過少に報告している可能性があると報じた英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)と米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の調査を開始した。

 ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁(ロスコムナゾール、Roskomnadzor)は、報道内容が虚偽情報を取り締まる法律に違反していないかどうかを調査していると述べたが、AFPの取材に対し、2紙に罰を科すことを考えているかどうかには言及しなかった。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ(Maria Zakharova)情報局長は、2紙に「虚偽情報」の取り下げを要求するとともに、両紙の編集長に正式に通告したと明らかにした。

 ザハロワ氏は、2紙の記事は疑わしいほど似通っており、同じ日に報じられたと指摘。欧州安保協力機構(OSCE)の報道の自由問題担当代表と、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)のオードレ・アズレ(Audrey Azoulay)事務局長に正式に苦情を訴えていく方針だという。

 フィナンシャル・タイムズ紙は現在のところ本件に関するコメントを出していないが、ニューヨーク・タイムズ紙は報道内容を曲げるつもりはないと主張。

 ニューヨーク・タイムズ紙のダニエル・ローデス・ハ(Danielle Rhoades Ha)広報部長は、「記事は公表されている政府記録や、国営機関の専門家に対する取材に基づいているので、その正確さには自信がある。記事の中に論争のある事実はない」と述べた。

 ロシアは、新型コロナウイルスの感染者数が世界で2番目に多いが、死者数は英国やフランス、イタリア、スペインの10分の1にとどまっており、14日の時点で感染者は25万2245人、死者は2305人となっている。

 これに対し、医療業界が資金不足にあるロシアが、米国や西欧諸国よりもうまく新型ウイルスに対応できているとは信じ難いとして、死者数を過少報告し、新型コロナ危機を小さく見せようとしているとの批判の声が上がっている。

 ロシア当局は死者数の偽装を否定。新型ウイルスによる直接的な死者のみを計上しており、流行が始まるのが遅かったおかげで西欧諸国の経験を教訓とすることができたから死者数が少ないのだと主張している。(c)AFP