【5月13日 AFP】ミャンマー軍の兵士らが目隠しをされた抑留者らを殴打する様子を捉えた動画がソーシャルメディア上で拡散し、国軍が西部ラカイン(Rakhine)州で部隊による抑留者への虐待があったことを認める事態となった。国軍の行為に対して処罰が科されることはないと頻繁に非難されていることから、今回過ちを認めたのは異例と言える。

 今月10日に表沙汰となったこの動画には、手錠をかけられ目隠しされた抑留者らの頭を殴ったり蹴ったりする、私服姿の兵士らの姿が映っていた。

 暴行を受けた抑留者5人は、仏教徒の少数民族ラカイン人の自治権拡大を求めて戦う武装組織アラカン軍(AA)の戦闘員であるとの疑いで拘束されていた。

 国軍は、治安部隊員の一部が「法律に従わない」やり方で抑留者らを尋問したと説明。責任者らに対して措置を講じると発表したが、どういった処罰が下されるのかについての詳細は明らかにしなかった。

 虐待を行っていると繰り返し非難されている軍の活動を珍しくうかがい知ることのできるこの映像は、数万回も共有され、憤慨する人と兵士らを擁護する人の間で意見が分かれた。

 昨年1月に国軍とAAとの間で戦闘が勃発して以降、国軍は苛烈化するAAと戦闘から抜け出せずにいる一方で、大勢の人が死傷し、約15万人が自宅からの避難を余儀なくされている。

 国連(UN)の人権専門家、李亮喜(イ・ヤンヒ、Yanghee Lee)氏は先月、「戦争犯罪および人道に反する犯罪」を行った可能性があるとしてミャンマー軍を調査すべきだと警告。

 李氏は、軍がAA戦闘員と疑った多数の人の失踪や拷問、殺害に携わった他、援助や負傷した民間人の病院搬送を阻止したと非難している。

 一方のミャンマー側はそうした主張を否定しており、AAとの間で虐待について非難の応酬を繰り広げている。

 ラカイン州北部はインターネットが遮断され、報道関係者の立ち入りが禁止されているため、両者の主張を検証することは不可能となっている。

 またミャンマー政府はAAを正式に「テロ組織」に指定しており、AAを取材しようとして接触した人は誰でも、同国のテロ関連法により起訴される可能性がある。(c)AFP