【5月14日 CNS】中国の不動産最大手「万科企業(Vanke)」が7日、自社の人材募集アプリで集約化養豚場の総経理など養豚分野の幹部人材を募集した。勤務地は広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)。「不動産は調子が悪い?」「家よりブタがもうかるの?」、万科の養豚参入は世間の大きな注目を集めている。

 同社が募集する養豚関係の人材は食品事業部に属すが、この部門は今年の3月に設立されたばかりで、初期の主力業務を養豚、野菜栽培、商業飲食の3分野に置いている。

 養豚進出の動機は、2019年の豚肉高騰、20年初頭の新型コロナ感染症の影響で、食品調達の不便を強いられた顧客のため、「農場から食卓まで」のサプライチェーンを構築することにある。一般家庭でも購入できる価格と安全で健康な毎日の食卓を実現する「ビューティフルライフの設計者」を目指す同社のビジネスにとって、重要な構成要素だ。

 不動産会社の養豚事業進出は万科が初めてではない。碧桂園(Country Garden)、万達(Wanda Group)、恒大(Evergrande)は、すでに養豚業に進出している。

 不動産のほか、インターネット企業も養豚業に参入している。ポータルサイト大手の網易(NetEase)は09年、食肉や農産物を扱う網易味央(Weiyang)を設立し、昨末までに3か所の養豚場を建設している。その他、阿里巴巴(アリババ、Alibaba)や京東(JD.com)も「スマート養豚計画」を発表している。

 いったい養豚はもうかるのだろうか?今年第1四半期の業績発表を見る限り、養豚業の成績は素晴らしく、上場会社の純利益は倍増している。牧原食品(Muyuan)の純利益は40億~45億元(約604億~680億円)、昨年同期は5億4100万元(約82億円)の欠損で、赤字から大幅黒字への大転換が実現した。

 一方、不動産業の方は、ウイルス感染症まん延の期間で大きな打撃を受けている。

 ただし、慎重に見るべきは、今は流れに乗っている養豚業でも、損する時期ともうかる時期が周期的に変化することだ。多くの養豚業者が18年には苦難の日々を強いられた。牧原食品も18年の株主分配純利益は5億2000万元(約78億5000万円)、前年同期比で78.01%もの減少となった。

 養豚が今確実にもうかるとしても、「もしも補助金が無かったら、万科はそれでも参入したのか?」など、依然多くの議論がある。

 政府は、養豚業者を増やし、豚肉価格の値上がりを抑えるため、一連の補助金政策を発表している。今年末までの養豚場の新設、改造、拡大などに対して補助金が出る。

 不動産リサーチの易居研究院(E-House China R&D Institute)データセンターの厳躍進(Yan Yuejin)総監は、「今、従来型の不動産業には発展を阻害する圧力が多い。特に政府の価格シーリング政策で利幅の確保が難しい。多くの不動産会社が農業分野への業容転換を図り、養豚場の経営などは新たな注目事業となっている」と分析する。

 しかし、今回の万科の養豚業参入は「不動産業へのバリエーション増強」という見方もある。同社の事業は、第1が不動産開発、第2が不動産管理サービス、そして新たに食品にも進出した。

 これは、第2の事業・不動産管理サービスと連携し、「食住一体化の仕組み」を構築、「万科の家に住んで、万科の住宅サービスを受け、万科提供の緑の野菜や豚肉を食べる」という、サービスの充実で不動産管理事業の価値を高める目的と考えられる。(c)CNS/JCM/AFPBB News