【5月13日 AFP】(写真追加)ブルガリアの洞窟で発見された歯と骨の破片が、欧州最古の現生人類ホモ・サピエンスのものであることが分かった。

【関連記事】ギリシャ洞窟の化石、人類移動の歴史塗り替え

 歯と骨の破片は、ブルガリア北部バチョキロ(Bacho Kiro)洞窟で発見されたもので、国際研究チームによって分析された。「ホモ・サピエンスが最初に中東から欧州に到着し、ネアンデルタール(Neanderthal)人と5000〜1万年間共存していた時期のものだ」と、発掘調査チームを率いた一人で、ブルガリア科学アカデミー(Bulgarian Academy of Sciences)考古学研究所のニコライ・シラコフ(Nikolay Sirakov)教授は12日、AFPに対し語った。

 シラコフ氏は「科学者らはこれまで、これらの出来事が起きたのは4万2000~3万8000年前だと推定していた」「われわれは、それ以前に起きたことを証明した」と述べた。

 英科学誌「ネイチャー(Nature)」と「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に今週発表された論文は、ホモ・サピエンスが約4万5000年前には欧州一帯に存在していたことを示唆している。

 今回国際研究チームで年代特定に関わったコレージュ・ド・フランス(College de France)は、バチョキロで発見された歯と骨は「上部(後期)旧石器時代におけるホモ・サピエンスの存在を裏付ける、知られている中で欧州最古の例だ」と説明。約4万5000年前に欧州に到着した現生人類は、ネアンデルタール人が住んでいた場所に進出し、徐々に取って代わるようになったという。

 ネアンデルタール人と現生人類が共存していた時代については、現在も広範な研究と議論が行われており、今回の発見はこれらに新たなデータを提供することになるだろう。

 今回、炭素14年代測定法の予備段階で歯と骨は、4万6940〜4万3650年前のものと推定された。また、コレージュ・ド・フランスによると、骨片に存在するミトコンドリアDNAの解析に基づいた第2の方法では、4万4830〜4万2616年前のものとの結果が出た。

「これらの結果は、現生人類がユーラシア大陸の中緯度地域に4万5000年前よりも早い時期に広がっていたことを示すものだ」とコレージュ・ド・フランスは述べている。「ネアンデルタール人と重なる場所に住みつつ、(ホモ・サピエンスは)ネアンデルタール人の行動に影響を及ぼして、彼らに取って代わっていった」 (c)AFP