【5月13日 AFP】アルジェリア出身の若手女子テニス選手、イネス・イッボウ(Ines Ibbou)が、下位ランク選手への経済支援に否定的な発言をしたドミニク・ティエム(Dominic Thiem、オーストリア)に反論し、ヴィーナス・ウィリアムス(Venus Williams、米国)らスター選手や母国政府などから支持を得ている。

 女子シングルスで世界ランク620位につけているイッボウは、自身のソーシャルメディアアカウントに投稿した9分間の動画で、「親愛なるドミニクへ」「あなたと同じ境遇にいたら、私のキャリアはどうなっていたでしょう?」と話し始めた。

 男子の世界ランク3位につけるティエムは先月、ロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)やノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)、そしてラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)らトップ選手が立ち上げた、新型コロナウイルスによるシーズン中断でツアー収入が途絶えた下位ランク選手への支援計画に否定的な態度を示した。

 ティエムはオーストリアの地元紙に対して、「誰一人飢えに苦しむことはない」と話すと、そうした選手の「多く」がトップになれなかったのは、彼らが「競技を最優先にしていない」からだと持論を展開。さらには、「なぜそういう選手に自分がお金をあげなくてはいけないのか分からない」「だったら、それを本当に必要としている人や組織に渡したい」と言い放った。

 これに対して21歳のイッボウは、アフリカ勢のテニス選手にとって人生は厳しいものであり、「私の国のような所では、女性がトップレベルのアスリートになるのは簡単ではない」と反論。ティエムが「魔法のような国」で育ち、両親がテニス指導者であるのに対して、「自分は非常に質素な家庭で育ち、両親はテニスとは無関係」であると強調した。

 そして、「私たちは生まれる場所を選べない」とすると、両親を愛していることや、トーナメントのために旅を続けて家族と会う時間がほとんどないことを残念に思っているとも付け加えた。

 これまでの通算獲得賞金は2万7825ドル(約300万円)で、中断された時点での今季のツアー収入は3135ドル(約34万円)だったイッボウは、「両親にプレゼントを買える日がくることを思い描いている」という。また、ティエムとは違ってコーチやチームを雇用できず、常に経費やアルジェリア人としてビザのことを心配していなければならない実情も明かした。