【7月6日 AFP】ケニアを代表する陸上男子のエリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)は、フルマラソンで史上初の2時間切りを達成した際に、論争を呼んだ米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)製の厚底シューズを履いていた。これを機にライバル会社は、巨額の利益をもたらすビジネスでナイキに追い付くべく、こぞって製品の開発を急ぐことになった。

 有名スポーツブランドのアディダス(Adidas)やアシックス(Asics)、ブルックス(Brooks)、ホカ(Hoka)、ニューバランス(New Balance)、サッカニー(Saucony)は、いずれも独自のカーボンファイバー製プレートを内蔵したランニングシューズを新発売したり、発売を予定したりしている。

 これらの新製品に関しては、機械ドーピングに等しいと批判する声もあれば、数十年間にわたり停滞が続いたランニングシューズにとって画期的な技術の進歩だと称賛する声も上がっている。

 ナイキは2016年に第一弾が発表された「ヴェイパーフライ(Vaporfly)」シリーズについて、「製品設計がいかにスポーツ界全体を盛り上げることができるかの模範であり、もっと広く言えばアスリートの潜在能力を新たな基準に押し上げるもの」とし、最大で4パーセントのパフォーマンス向上が見込まれると強調した。

 こうしてナイキシューズ着用のアスリートがいきなり有利な状況に立つと、周囲ではすぐさま疑問の声が上がった。ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)はこの状況を受けて、ソールの厚さを40ミリ以下(ヴェイパーフライは36ミリ)、埋め込むことができるプレートを1枚に制限する措置に踏み切った。

 その一方で、エリート大会で使用が認められるランニングシューズは3月中旬までに一般発売しているものに限られ、プロトタイプ(試作モデル)については禁止された。