■「矯正治療」を強制する法案

 近年の調査では、インドネシアでは不寛容と過激主義が増加傾向にある。2017年のある調査では国民の80%以上が、国が厳格なイスラム法を採用することを支持していることが示唆された。

 中でも独自のイスラム法が採用されているアチェ州では、同性愛は公開むち打ちの刑に処される可能性がある。2018年には警察がトランスジェンダー女性のグループを拘束し、強制的に髪を切り、男性の服を着せるなどして公然と屈辱を与えた。

 またスマトラ島のパダン(Padang)市当局は同年、大規模なデモを受けて、性的少数者の住民に「罪深い行為」をやめるための治療を受けるよう命じた。

 イスラム教保守派の議員たちは現在、「家族の回復」と称する法案を提出している。性的逸脱行為を追放するとうたうこの法案が通過すれば、同性愛者やトランスジェンダーの人々は「リハビリ」という名目で悪魔払いなどの「矯正治療」を強いられることになる。法案反対派はこの法案について、性差別的で反LGBT的だと非難している。

 しかし、過酷な法改定に声高に反発している少数派もいる。

「女性に対する暴力国家委員会(National Commission on Violence Against Women)」の元委員ブディ・ワヒュニ(Budi Wahyuni)氏は、「悪魔払いなどの転換療法は、性的少数者に対する暴力だ」と非難している。(c)AFP/Haeril HALIM