【5月11日 AFP】非常事態には非常手段が必要となるものだが、新型コロナウイルス対策で厳格なロックダウン(都市封鎖)が敷かれているポルトガルの高齢者施設では、入所者と家族の面会をかなえるため、高所作業用クレーンを活用するという奇策がこのほど導入された。

「元気にしている?」──クレーンの作業台に乗ったクレミルデさん(68)が2階の窓の外から声をかけると、フェースカバーを着けた介護職員2人に付き添われた兄のジョーさん(79)は、窓辺に寄せた車椅子から「まるで籠の中の鳥だよ!」と答えた。

 2人が顔を合わせたのは約2か月ぶり。ロックダウンが始まって以来初めてだ。

 クレミルデさんはジョーさんの誕生日を祝えなかったことをわびて、「収束したらライスプディングとケーキを食べましょう」と兄を励ました。

 この老人ホームは、首都リスボンと第2の都市ポルト(Porto)の間に位置する海沿いの町フィゲイラダフォス(Figueira da Foz)にある。施設を運営する慈善団体の代表によると、クレーンを利用するアイデアは、ベルギーの施設経営者の記事を読んだときに思いついたそうだ。

 記事では、家族が施設内に立ち入らなくても入所者と面会できるよう、窓やビルの壁面を清掃するためのゴンドラを活用したことが紹介されていた。幸い、クレーンの貸し出しと操作は、無償で提供してくれる会社がすぐに見つかったという。(c)AFP/Thomas CABRAL